トランプ大統領の一般教書演説 アメリカの健全さを覗かせた白装束の民主党女性議員の意外な反応

2019-02-06t032836

 アメリカで5日夜に行われたトランプ大統領による一般教書演説は、昨年とは議会勢力が様変わりしたことで、トランプ氏からどんな発言が飛び出すかが注目されました。中間選挙で下院多数派となった民主党の圧力の中で、さまざまな光景を見せてくれましたが、私は恒例のこの行事にアメリカの民主主義の健全な側面をいつも見る思いです。

 今回、民主党女性議員は、トランプ氏が女性の権利を軽視していることに抗議する意図もあり、ペロシ下院議長も含め、白い服を来て出席しました。アメリカではイメージ戦略が重要ですが、注目度の高い大統領の施政方針を示す年1回の行事で1時間半に渡り、映像に白装束の固まりが映し出された形です。

 通常、大統領が主張する過去の実績や新しい方針に対しては、大統領の支持政党の議員しか立ち上がって拍手せず、大統領と対峙する政党議員は着席したままということが多いのですが、時には大統領不支持の政党議員の中に賛成できることには立ち上がって拍手する光景も見られます。

 今回は、大統領の演説に立ち上がって拍手喝采した数が104回で、2018年の117回を下回ったなどというメディアもありますが、回数より中身が問題です。興味深いのは、アメリカ人として共有している価値観については、全員が拍手することです。これがアメリカの民主主義の健全さを表すものです。

 昨年は、北朝鮮に拉致され、解放後帰国して亡くなったアメリカ人青年の両親が招かれ、全議員が立ち上がり、厳しい対北政策を約束する拍手をしました。今回は、招待されたユダヤ人強制収容所の生き残りの男性や第2次世界大戦に従軍した元兵士に全員で称賛の拍手をしたのも同じような価値観共有の場です。

 今回、何度か民主党の一部議員が、大統領の話す内容に反応し、共和党議員とともに立ち上がり拍手する光景がありましたが、圧巻は、大統領が労働人口に占める女性の割合や連邦議会の女性議員の数が史上最多になったと指摘した時、議会の真ん中に陣取った白装束の野党・民主党の女性議員たちが立ち上がり、拍手喝采し喜び合った光景でした。

 いいことは讃え、悪いと思うことは厳しく批判するアメリカ人の健全な精神を垣間見るもので、この光景を真っ先に報じたのが、アンチ・トランプの急先鋒の英BBCTVだったのも皮肉なことです。アメリカ人は歴史がないだけにいつまでも根に持つことがなく、キリスト教の許しの精神からも、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い的なものはありません。

 今、対立している米中関係や北朝鮮との交渉でも、単に敵視しているのではなく、中国が覇権主義や軍拡、共産党一党独裁を辞め、北朝鮮が核開発を完全に諦めれば、いい関係が築け、素晴らしい国になるとトランプ氏は繰り返し述べています。

 このアメリカの過去を引きずらない超ポジティブ思考が、アメリカが衰退しない原動力です。アメリカは超党派で動くこともよくあり、今回も薬価の引き下げやエイズ、小児がんの研究推進などについて超党派の賛同を求め、がん治療に耐え抜いたという10歳の少女が紹介された時にも、議場から満場の拍手が贈られました。

 この目的や意義に共感できれば、日頃対立する政治家が共に働く姿は非常に健全といえ、その健全さが、アメリカの民主主義や自由競争原理を支えているという視点がアメリカを読み解く重要な点だといえます。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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