米朝首脳会談の最大の受益国といわれるベトナム 日系企業の業績改善見通しはアジアトップ

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   発展めざましいホーチミン市

 合意に至らなかった米朝首脳会談の成果の中身が議論される中、会談が行われたハノイのあるベトナムは、世界に経済発展をアピールする千載一隅のチャンスを得ました。日本貿易振興機構(JETRO)は4日、ベトナムの日系企業の2018年の現地調達率がマレーシアを抜いたことを明らかにしました。

 JETROは、米朝首脳会談の熱が冷めやらぬハノイで、ベトナムに進出した日系企業の活動実態報告会を行い、日系企業のベトナムでの現地調達率が36.3%と、マレーシアを上回ったと報告しました。データは同機構の2018年度の「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果に基づくものです。

 無論、アジア・オセアニア地域では、中国、タイ、インドネシアが多くの数字でベトナムを上回っていますが、現地調達率は関税や為替リスクを含む貿易環境の不安定化の中、ローカリゼーションを進める重要な要素であるため、ベトナムの勢いは評価すべきこといえます。

 調査は、ベトナムに拠点を置く日系企業1,532社を対象に実施され、787社から回答を得たとし、まず、同国では65.3%が「黒字だった」と回答し、黒字企業の割合は前年比0.2ポイント拡大したとしています。この10年、ベトナムの黒字計上率の割合は80%前後と高く、安定的に収益を確保していることが伺えます。

 さらに今年19年の事業見通しについても、58.7%が「前年より業績が改善する」と回答しており、18年見通しの52.4%を大きく上回り、特に非製造業は63.7%が「改善する」と答えているのが特徴です。今年の同国の業績改善見通しは、アジアではフィリピンの55.5%を上回るトップだったとしています。経済不調にある中国は39.5%と低い見通しでした。

 事業の拡大意欲でも、ベトナムはアジアで最も高い数字を示し、2位のマレーシアの54%を大きく上回る69.8%とベトナム市場の成長を物語っています。難をいえば従業員の賃金上昇率がアジアで最も高いことですが、その上昇も落ち着きを見せています。

 現在のアジア市場では労働コストだけを追求する時代は終わろうとしており、経済成長に伴う現地ビジネスの拡大に軸足が移っていることから、ベトナムのポテンシャルは依然高いといえます。負の部分といわれた原材料・部品の現地調達の難しさも改善傾向にあります。

 課題としてはベトナムで現地調達率が39.7%と上昇している一方で、地場企業から原材料や部品を調達している企業の割合が、全体では14.4%にとどまっていることです。つまり、日系企業にとっては、現地に進出した日系企業からの調達の割合が依然高いことです。地場産業の成長が外資の進出速度に追いついていない実態が浮き彫りになっています。

 とはいえ、私が8年前に行った調査からすると、ベトナム人の労働意欲、向上意欲は飛躍的に高まっています。また、スタートアップ企業への投資が急増中で、私の見立てでは日系企業拠点数では東南アジア最大のタイよりも、向上意欲は高くなっているといえます。社会主義国という特殊性はありますが、政治的には極端なカントリーリスクは今のところありません。

 今後、労働の質が向上し地場産業が成長すれば、現地調達率はさらに向上することが予想されます。トランプ米大統領が推薦し、金正恩北朝鮮労働委員長が興味を示すベトナムの経済発展モデルは、世界的にインパクトを与えたのは事実でしょう。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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