途上国を育てる支援ビジネスの姿勢は正しいが、「想定外との遭遇」への耐性は必須

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 大分県の平松知事(当時)が提唱して始まった地方経済再生の一村一品運動は、今や世界に拡がっています。このブログでも、タイの農村の自立促進の「One Tambon One Product」運動などを紹介しましたが、日本でも海外支援とビジネスを結びつける地味な活動が展開され、それなりに注目されています。

 この10年、意味のある仕事に就きたいと考える若者が日本でも増えているといわれ、高学歴者、外資系金融機関などで研鑽した若者が、途上国と先進国を結びつけるビジネスを展開したりしています。大企業による巨額投資による製品開発、巨大市場を念頭に大量生産体制を組むビジネスモデルとは、まったく異なったアプローチですが、ビジネス経験豊富な人々も参入し始めています。

 一村一品運動は地に足のついた地味な活動ですが、途上国開発という意味では、日本は多くの国に投資や技術協力しながら、相手国の成長を手助けしてきた歴史は半世紀を超えます。その結果の一つが中国ですが、まさか世界制覇の中華思想を温存し、21世紀型の独裁資本主義を拡大するのが目的だったのにアメリカが気づいたのは、トランプ政権になってからの話です。

 中には今も中国の善良さを信じ、トランプ氏のような人物が登場し、強力な圧力を加えなければ、中国も意固地にならず、覇権主義を強めることはなかったはずと指摘する人もいます。しかし、火のないところに煙は立たないわけですし、あのアメリカの民主党でさえ、トランプの対中強硬姿勢に同意しているところを見ると、中国の脅威は明らかといえます。

 私個人は、ちょうど東西冷戦終結、日本のバブル崩壊と時を同じくしてフランスに移動したこともあり、欧米の要人インタビューを重ねる中、世界の新たなフレームワーク作りに彼らが注力する姿を見て、日本がイデオロギー対立の冷静時代にいかに蚊帳の外だったかを目の当たりにしました。

 中国の例は非常に特殊なもので、他の途上国に当てはまるとは到底思えません。それに中国政府の術中にはまったのは世界の大企業です。

 今、世界の途上国に関心を持つ若者が増えていることは歓迎すべきことですし、アメリカばかりを見てきた戦後の日本の上昇思考は、先進国として成熟していく過程にあり、途上国に関心が移るのは重要なことです。

 日本の今の若者に目標がないとか、危機感がないとかいわれますが、私の持論は恵まれた日本人(自覚が薄いが)、特に若者は恵まれない国に貢献する姿勢さえ持てば、やるべきことは山ほどあるし、深い次元で心を満足させられると考えています。

 しかし、そこにも落とし穴はあるということです。人道支援活動に熱心な人を見ると、欧米ではキリスト教的精神からの奉仕活動は結構主流で、カトリック教会などは孤児院や病院などを伝統的に運営しています。

 一方で日本は宗教と結びつくケースは少なく、恵まれない国や人を支援する人の中には、人権、反権力、反大企業的考えを持つ人も少なくなく、日本はどちらかといえば、政治的に左翼的考えを持つ人は少なくありません。国際的なNGOで働く日本人の中にも多くいます。

 途上国ほど独裁者や利権をむさぼる人間が多く、人権が無視されていることを考えると感情面では理解できますが、問題解決には繋がっていると思えません。フェアトレードに関わる人によく見られるパターンの一つです。

 途上国の村おこしを基本に置くビジネスモデルは、商社が目もくれないニッチな市場の開発でもあり、同時に高いリスクも伴います。本人たちは人道的動機もあり、途上国からの商品を買ってくれる人たちに、その意味の理解を求めますが、それだけではビジネスは成り立たないのも現実です。

 人はブランドで物を買う習性があり、日本人は特に質にこだわるので、生産国で働く人の技術向上も課題です。となると異文化での人材育成スキルも必要です。今は輸入販売では大手企業も参入していますが、最初から優れた人材を集めるビジネスモデルではないので地道に人を育てる必要があります。

 品質のバラツキは先進国市場ではマイナスです。加えて途上国は政情が不安定でカントリーリスクも高いのが現状です。確実に相手国の地元の人々の役に立っているとしても何が起こるか分らないのが途上国です。

 アフリカなどで育てた地場産業を、根こそぎ地元の有力者に持っていかれた例もあります。それにこちらが純粋な動機であって、政治に利用されることもあります。無論、取り組む側に政治的意図があるのは問題外ですが、現地で私が出会う日本人を含む途上国支援ビジネスに取り組み人たちの話を総合すれば、押し寄せる想定外な状況への耐性が不可欠ということです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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