ポピュリズム政治家は変人が多い

 ヴェルサイユ宮殿の庭をジョギング中に倒れ、病院に運ばれ、翌日に退院したフランスのサルコジ大統領は、今週は公務に復帰し、週末からヴァカンスに入るそうです。世界のどの大統領より激しく動き回り、激務をこなすスーパー大統領と呼ばれていましたが、肉体には限界があるようです。



 アメリカのみならず、核兵器保有国のトップは、核兵器の発射を命令できる立場ですから、健康上の問題もガラス張りにして国民に安心感を与える必要があります。フランスでは、1995年に14年間の任期を終えて辞任したミッテラン氏が、実は前立腺ガンだったことが辞任してから明かされ問題になりました。



 野心の固まりで、手に入れたいものはどんな事をしてでも手に入れるというサルコジ氏は、大統領の座を手に入れ、自分の給料も上げ、元トップモデルを妻にしました。あとはナポレオンのようにフランスの歴史に名を刻む大統領になること、いや次は欧州連合(EU)の大統領かもしれません。



 大衆の心の動きを敏感に感じ取る天性に恵まれたサルコジ大統領は、今やポピュリズムが先進国の政治のキーになる時代の花形指導者というところでしょう。元仏国民議会議員の友人は私に「サルコジの弁が立つのは認めるが、人間的にはまったく好きになれない」と言っていましたが、ポピュリスム政治家には変人が多いようです。



 ポピュリズムは、政治エリートや官僚を飛び越え、直接、国民の支持を得て動くのが常で、マスコミを巧みに操る能力が鍵になります。フランスの場合は政治エリート、高級官僚は、ほぼ全てが国立政治学院(ENA)の卒業生(エナルク)ですが、サルコジ氏は平凡な国立大学の法科出身で、ポピュリズムの第1の条件を満たしています。



 エリート政治家と官僚が築き上げてきた福祉国家のフランス・システムを常に攻撃材料にし、官僚の既得権益を攻撃し、大統領主導で国を運営することにこだわるのもポピュリズムに合致しています。何かあればマスコミを利用し、国民に直接訴え、理解を得ようとする姿勢もその流れでしょう。



 ただ、ポピュリズム政治は、気分屋で自己中心的で利権が錯綜する国民の支持を基盤としている点で、非常に危険でもあります。日本では、既得権益をたっぷり持ち、官僚と癒着する古い自民党をぶっ壊すと言い、耳障りのいい「改革」をフレーズに高い支持を得た小泉政権が、その後の日本を危うくしています。麻生さんもその犠牲者でしょう。



 政治エリートは権益にしがみつき、ポピュリズムは国民に媚び、どちらも危ういものを持っています。実は、そこで重要な存在なのがマスコミですが、このマスコミも市場原理で動いているという意味では、ポピュリズムに首まで使っていると言えます。馬鹿番組の垂れ流しで国民を思考停止状態にしておいて、一部の偏った思想を持つマスコミ人によって国民がミスリードされている日本は憂うべき状況でしょう。




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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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