G7の招かれざる客プーチン氏を仏大統領別荘に招待したマクロン氏の思惑とは

Bregancon
  フランスの内政、外交で過去から重要な役割を担うブレガンソン城砦の別荘

 フランスの歴代大統領が使用する夏の保養のための別荘、仏南東部ブレガンソン城砦に19日、ロシアのプーチン大統領が現れました。24日から仏南西部ビアリッツで開催される先進7か国(G7)首脳会議を控えた時期にマクロン仏大統領が招待したことによるものです。

 2014年のロシアの軍事侵攻によるウクライナ南部のクリミア併合以来、ロシアはG8から締め出され、プーチン氏は今もG7には招かれざる客です。今回の仏露会談で話し合われた内容全てが明らかになったわけではありませんが、少なくとも今年4月にウクライナの大統領に選ばれたゼレンスキー氏とプーチン氏の首脳会談の可能性が議題になったことなどが明らかになっています。

 マクロン大統領は、来年5月にモスクワで開催される対独戦勝75周年記念式典に正式招待され、出席を表明、プーチン氏はクリミア問題で冷え込んだヨーロッパとの関係を修復する糸口にしたいところだと思われます。来年はロシア文化イベントが仏全土でも開催予定です。

 同時に、マクロン氏は最近、ロシア国内で起きる反政府デモへの当局の度を超えた取り締まりに不快感を表したのに対して、プーチン氏はフランスで長期化する黄色いベスト運動を持ち出し、同じようなことは避けたいと切り返し、話は平行線に終わったようです。

 実はブレガンソンは、私もヴァカンスで訪れており、そこの城砦近くのレストランのオーナーにおもしろい話を聞いたことがあります。近年南仏には多くのロシア人富裕層が押し寄せているそうですが、彼らのマナーの悪さに辟易し、入店を拒否しているという話です。

 彼らは、レストランに入るなり、メニューにある料理を全て持ってこいと注文し、周囲の客に迷惑になるような大騒ぎをし、食い散らして帰っていくというのです。私が、そのレストランにいた時も10人ほどのロシア人客が入り口でオーナーと激しい問答をしていました。

 そんなことを知るはずもないプーチン氏は、マクロン大統領から歓迎を受け、上機嫌だったようです。マクロン大統領にとっては、ロシアからの天然ガスのパイプライン計画でトランプ米大統領に批判され、経済も低迷しているドイツのメルケル首相や、英国内でロシアの元スパイを毒殺されロシアとの関係が冷え込む英国のジョンソン首相に先んじて、対ロシア外交で主導権を握りたいというところでしょう。

 G7直前に議長国として、ウクライナ問題で締め出されたプーチン氏に会い、フランスが独自の外交ルートを開くことは、地球温暖化対策やイランの核問題で対立するアメリカのトランプ大統領への牽制にもなる話です。

 フランスはマクロン政権になった2017年以降、米英独などの批判をよそにロシアとは定期的な接触を繰り返しています。過去の歴史でロシアを孤立化させていいことは一度もなかったし、プーチン氏の真意がどこにあるかを知ることも重要です。一方のロシアは経済面においてヨーロッパは欠かせない存在です。

 今回の首脳会談直前、ロシアの司法当局は、汚職容疑でロシアに拘留されていたフランス人銀行家のフィリップ・ドゥルパル氏を釈放することを突如発表しました。プーチン氏はマクロン氏とのパイプ作りに積極的な姿勢を見せた形です。

 フランス・メディアは、すぐに結果の出る問題ではないが、何もしないよりはいいし、G7の首脳間の関係がギクシャクする今、マクロン氏は、誰もが憧れる南フランスの地中海に面した別荘でリラックスした形で会談することで、自身が信じる多国間主義をG7にも示したかったと書いています。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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