白人を見つけるのが難しいほど増えた移民たちにパリを逃げ出す白人住民が増えている

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 2015年11月に起きた大規模なパリ同時多発テロの舞台となったバタクラン劇場

 パリの地下鉄や市内と郊外を結ぶ高速電車RERに乗ると、30年前に比べ、圧倒的に白人ではない移民系の乗客が増えていることに気づきます。以前のパリは他の世界の大都市同様、西高東低といわれ、富裕層の多くは西側に住み、移民貧困層は東側に住むのが常でしたが、今は違います。

 理由の一つは、オランド前左派政権が実施した貧困地区の危険なゲットー化を避けるための公営低家賃住宅を富裕層が住む地区に積極的に建設したことです。たとえば、パリの西の外側のセーヌ川沿いを走るトラム2と呼ばれる電車は、川沿いの素晴らしい景色が拡がるエリアをポルト・ド・ベルサイユとラ・デファンスを結んでいます。

 この電車に乗れば、車窓からの眺めはエッフェル塔などパリの街並みを見下ろす丘沿いに高級住宅が建ち並び、富裕層に人気の場所でした。ところがオランド左派政権は、その路線の再開発で高級アパートと低家賃住宅を混在させる街づくりに着手、たとえば、ムーラン・シュル・セーヌの周りは真新しいオフィスビル、低家賃住宅、高級アパートが交互に建てられています。

 昔は見なかった移民系の人たちが、この電車を利用するようになり、1年前に高級アパートを購入した友人のブノア氏は、買ったことを後悔しています。友人たちは「もっとちゃんと調べてから購入すべきだったのでは」といわれ、彼は親しい友人の勧めだったので疑うことなく購入してしまったといっています。

 では、ノルマンジー出身のブノア氏にとって、何が問題かといえば、富裕層が住む安全でクリーンな町を期待していたのが、そうではないからです。白人フランス人の多くは肌の色で差別するのは良くないと思っていますが、彼らは「アフリカや中東系の移民たちは、文明社会のルールに従おうとしない」とよくいいます。

 ゴミを分別せずに、それも行政に指定されていない路上に捨てたり、フランスでは良くないとされるアパートの窓越しに洗濯物を干すことや、窓を開けて夜に大きな音で音楽を流し、大勢が集まって騒いだりする行為は、フランス人には不快です。禁止されているはずのイスラム教女性が全身を覆うブルカやニカブを平気で着用し、法に従おうとはしません。

 私も移民系の家庭を何度も取材していますが、彼らが住むアパートの中は完全に自国と同じで、フランス文化に溶け込む気配はありません。アメリカやカナダのような移民で成り立つ多文化共存主義の国ならともかく、非常に歴史の古い、それも世界中が認める文明国家を自負するフランスでは、耐えがたい変化です。

 同じことはロンドンでもいえ、東側の中流以上の人々が住むイーリングなどのエリアで、黒人の暴動が起きたり、自国の言葉しか喋らないポーランド人労働者がわがもの顔でたむろしする姿は、フランスより白人比率の高い英国としては耐えがたい状況です。

 友人のブノア氏は今「3年以内に南仏に仕事を見つけ、引っ越すつもりだ」といっています。とにかく、パリは不潔で治安がどんどん悪くなり、暴力事件も多発し、彼は電車に乗る度に暗い表情の移民たちを見て、気分が悪くなるといっています。

 派手で優美なパリの街並みとは、ま逆な雰囲気が地下鉄には漂っているというのは、私も共感します。無論、頭では移民を差別すべきでないとか、困った人には手を差し伸べるべきだというのは、多くのフランス人も頭では理解していますが、町がどんどん荒れていくのを見て、いつしかパリは内戦で荒れ果てた中東やアフリカのような町になるかもしれないと感じる人も少なくありません。

 そのため、今でも移民排斥を積極的進めたい極右やポピュリズム政党は、ヨーロッパ中で根強い支持を集めています。ヒューマニズムの限界とナショナリズムの台頭を非難するのは簡単ですが、フランスに来ても基本的社会ルールを守らず、まったく溶け込もうとしない移民たちと、どう共存するかは非常に難しい課題です。

 平等社会に慣れた日本人は、世界中の大都市で富裕層と貧困層がきっちり分けられて住み、富裕層はわがもの顔で振る舞い、貧困層が町を荒らす姿に違和感を持ちます。両者を同じ地区で共存させる荒っぽいやり方ではなく、まずは丁寧な教育を地道に行うしかないのかもしれません。

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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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