悲劇が襲うベトナム人技能実習生 受入れ拡大というが働き方改革でどこまで改善されたのか

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 このブログで何度か、高度技能人材にとって日本はアジアで最も働きたくない国に選ばれたことについて書きました。実は高卒がほとんどの日本が受け入れる外国人技能実習生についても、受け入れた会社からの逃亡や自殺を含め、厳しい実態があることも無視できない問題です。

 今月12日、日本企業や地方自治体など1,000人を超える関係者を率いてベトナム訪問中の二階俊博自民党幹事長がフック同国首相と会談し、日本でのベトナム人の就労拡大で一致したことが報道されました。同時にベトナム人の働きやすい環境整備のため、両国政府が悪質業者の徹底排除で協力することも確認したといいます。

 日本が受け入れる外国人技能実習生が国内で行方不明になる問題は何年も前から常態化し、いわゆる言い方は悪いのですが、最初に受け入れた企業から無断で「逃亡する」実習生問題は大きな問題となっています。その状況は深刻化し、日本のベトナム人コミュニティーでは、自殺者の増加も指摘され、本国ベトナムでも悲しいニュースとして報じられています。

 厚生省のホームページによれば「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う”人づくり”に協力することを目的とする」とあります。

 バブルの時代から外国人労働者受入れをしてきた日本が2017年に施行した新しい外国人技能実習制度は、日本の労働者不足という事情とも重なり、受入れ人数は増える一方です。しかし、その影で多くの悲劇が起きていることも無視できません。

 今回のベトナムでの合意の中にある悪質業者の排除というのも、実習生を日本の企業へ仲介する団体であるベトナム側の「送り出し機関」と日本の管理団体である「協同組合」に忍び寄る実習生を食い物にする犯罪組織の摘発が念頭にあります。不法就労を含め、移民、難民を標的とした悪質な人身売買組織は世界中に存在し、日本では反社会勢力の収入源にもなっています。

 実習生の多くは高卒で農家出身者。親の田畑を担保に渡航に関わる費用を捻出しているわけですが手数料も発生しています。その手数料は主にこの送り出し機関に支払うもので、ベトナム政府は上限を3,600ドルと規定していますが、実際には違法なブローカーに多額の手数料を払うケースが多く、実習生は日本到着時にすでに1万ドルの借金を抱えている例も少なくないと言います。

 しかし、逃亡や自殺問題は借金と犯罪組織だけの問題ではなく、受け入れた日本企業の問題も検証する必要があります。日本の実習生の間では日本は来る前はバラ色、来てからはブラックという言葉が共感を受けているといいます。理由は来日前は日本は「夢の国」というイメージしかなく、実際の職場は非常に厳しく、差別もあり孤立感も深刻だからです。

 多額の借金で人質にされ、逃げ場がなく、それでも生活をギリギリまで切り詰め家族に送金し続け、結果、無断逃亡や自殺が起きてしまうというわけです。受け入れる日本企業が知るべきは、まずはベトナムの事情です。8割が農業従事の第1位産業のベトナムでは産業化社会は都市部だけで、人々は大量生産で質の安定した製品を供給するなどの経験はありません。

 私の友人はベトナム中部ダナンの日系企業の管理職ですが、定時出勤そのものでも苦労しています。日系建設会社では、何度も支持し確認しなければ柱を垂直に立てるのも難しいといっています。もっと深刻なのは、身につけた技能を将来に役立てるという考えそのものがないことです。

 つまり、日本側は技術供与しているつもりでも、本人たちはお金になれば、まったく異なった職種に簡単に転職しようとし、プロ意識は育たないという問題もあるわけです。性格は8割が仏教徒なので日本人に似て温和ですが、非常にナイーブです。日本でのカルチャーショックは想像できないものがあります。

 ところが、グローバルマネジメントの知識もなく、丁寧なコミュニケーションを取らない企業も多く、本来、日本人に似て本音を喋ろうとしないベトナム人たちは、自分の中に溜め込み、限界が来てしまうというわけです。労働者不足が企業の死活問題というなら、来てもらえる外国人に対して感謝こそすれ、上から目線は大きな間違いです。

 まず、外国人が日本人と同じように働くという観念は棄てるべきです。金を稼ぎ、技術を身につけるために来日したのに借金の重圧も加わり、異文化の中で生き抜いていくことは容易なことではありません。結局、彼らを戦力として活かせなければ企業自体がダメージを受けるわけですから、どのような育成方法が有効か考える必要があるということです。

 中でもコミュニケーション問題が最も根幹にあるといわれますが、それもベトナム語や日本語という言語の問題だけではありません。彼らからのフィードバックにどこまで真剣に耳を傾け、職場を改善していくかがもっと重要なことです。受け入れる側も根本的な意識改革が必要です。

 働き方改革は日本人だけでなく、外国人受入れが後押しして施行されたものです。ベトナム人実習生からブラックといわれないためにも徹底した改善がなければ、悲劇は起き続け、アジアの人々が日本を敬遠する日も来ると思われます。

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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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