ドイツで初のベトナム系閣僚を起用

 あまり知られていないことですが、人種差別はアメリカの専売特許ではありません。むしろ、憲法で平等を強調している移民の国アメリカでは、人種は勢力争いでもあるわけで、だからこそ、人種問題は表面化してしまうという側面があります。それに比べ、欧州の人種差別は通常、非欧州人に対する差別という形で起きています。つまり、アフリカ系、アラブ系、アジア系がその対象となるわけです。



 今回、ドイツで初のベトナム系政治家が保健相に起用されました。アジア系ではフランス、ドイツなどにベトナム系の人々が多くいます。今回閣僚入りしたフィリップ・レスラー氏は、小さい時にドイツ人夫婦の養子となった人物で、母国をまったく知らない中身はドイツ人です。たぶん、両親も知らないし、ベトナムの生活文化とも縁がなかったはずです。



 私も教えているフランスの大学で、何人ものアジア系の学生を教えてきました。留学生を除き、レスラー氏同様、養子として幼児の時に連れてこられ、フランス人の夫婦に育てられた学生がほとんどで、あとはベトナム戦争時に難民として家族がフランスに移民してきたケースです。彼らの場合は、両親がベトナム人なので、ベトナムの生活習慣も知っていますが、フランス語しか喋れないケースが少なくありません。



 レスラー氏は、東洋人は皆、空手ができるからいじめられなかったとジョークを言っていますが、差別は実は深刻で、彼らの人生は平坦には見えません。友人のベルリン国立美術館の東洋部門のファイト館長は、妻が中国人ですが、彼は「妻はいつも差別に苦しんでいる」と言っています。学生に聞いても「アラブ人ほどじゃないけど、寂しい思いをすることは多かった」と言います。



 ヨーロッパでは北に行けば行くほど、差別はきついとも言われています。背の高い真っ白な肌の人間が多い北では、東洋人は異色な存在です。ただ、基本的に東洋人への評価は悪くはありません。例えば、ベトナム移民が増え、最近では中国移民が急増していますが、彼らが通う学校は学力が上がると言われています。勤勉で向上心があると見られているからです。英国ではインド人の勤勉も有名ですが、非欧州人が市民権を得るのは至難の業です。



 ヨーロッパは各国に極右政党がありますが、彼らは人種的には非欧州系の排斥を主張する場合が多く、特にアフリカ系、アラブ系が標的です。欧州連合は拡大し、27カ国になっていますが、これをトルコに拡大すると、非欧州系人種、非キリスト教文化圏を受け入れることになるわけですが、道のりは遠いのが実情です。

 


関連記事

プロフィール

artworks21

Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

検索フォーム

QRコード

QR

トラックバック