WHOも懸念する医療脆弱国、感染者の把握が難しい途上国、新興国に懸念

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 新型肺炎コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の世界的感染拡大が懸念される中、その感染実態は正確には把握されていない国々があることは、あまり話題になっていません。国際批判を回避したい中国政府はピークは過ぎたといい、中国から投資が引いていくことをくい止めるのに必死なようにも見えますが、他の新興国の状況はさらに複雑です。

 日本人は、具合が悪くなれば病院に行って医者に見てもらうのが当り前ですが、一般市民の多くが病院に行けない国もたくさんあります。それも本当に貧しいアフリカの国であれば、医療支援の人道団体が入っているので、エボラ熱がアフリカで発生した時も先進国の医療チームによって徹底的に拡散防止が行われました。

 ところが経済成長で勢いのある新興国といわれる国の医療は十分に整備されていないにも関わらず、国際的NGOから無償で十分な医療支援を受けているわけでもありません。たとえばフィリピンはASEAN諸国のインドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムなどに比べると、過去50年間のGDP成長率は相対的に低い水準ですが、昨年は外国資本の認可投資額は25%増で過去最高を記録しました。

 貧困対策が急務といわれるフィリピンですが、平均寿命が69.3歳と短く、ネクスト11と呼ばれる新興国の中でもインドネシアが69.3歳とアジアで同じですが、ベトナムは76.3歳です。平均寿命は、その国の医療の整備状態と大きく関係しており、未整備の場合は乳児死亡率が高く、医療を受けられずに死んでいく人の数が多いために平均寿命は引き下げられています。

 フィリピンの場合も貧富の差が激しく、貧困率は38.1%を記録した2000年からの2019年は20.8%に改善されましたが、国民の4割は病になっても医療費が高すぎて病院に行けない状態が続いています。つまり、深刻な病気の場合でも医療を受けられないままに死んでいくケースは少なくないわけです。

 新興国はインフラ整備や貧困対策が課題ですが、巨額の投資が必要な医療保健分野は手つかずの場合が多いのが実情です。実は度々世界のメディアに登場する世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、エチオピアの保健相時代に保健サービスで革新的改革を行い乳児死亡率を押し下げたことで知られています。ちなみにエチオピアの平均寿命は65.5歳です。

 一般の疾病でも十分な医療が受けられない状況の中、いったいCOVID-19感染者の正確な人数把握は可能なのでしょうか。症状が見られない陽性反応のウイルス感染者もいることが確認されている位ですから、発熱したくらいでは病院に行けない人が多い国で感染者を確認するのは容易でないはずです。

 せいぜい感染率の高い国からの入国拒否など水際対策で防ぐしかないわけですが、仮に感染者の死亡が確認されたとすると、感染拡大阻止に莫大な医療費が掛かることが予想され、政府としては戦々恐々としているはずです。検疫のための医療機器も高額で訓練された人材も必要です。医療そのものが行き渡っていない国では大きな負担です。

 COVID-19は高齢者や持病を持つ人の重篤化が確認されていますが、国としても医療制度の未整備な弱い国にはびこる危険性も考えられます。すでに中国の経済減速が新興国に深刻なダメージを与える可能性も指摘されています。世界が協力してウイルス蔓延を阻止する必要がありますが、途上国や新興国への拡大回避は喫緊の課題といえそうです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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