無名の初代EU大統領

 リスボン条約が12月1日に、ようやく発効の運びとなる中、EUは緊急首脳会議をブリュッセルで開き、ベルギーのファンロンバイ首相を初代欧州理事会常任議長(EU大統領)に指名することで合意しました。外務・安全保障上級代表(EU外相)には、英国元上院総務のキャサリン・アシュトン欧州委員(53・通商担当)が指名されました。

 

 EU大統領は、EU27カ国をとりまとめる議長で、一国家の大統領のような存在ではないにしろ、やはり、EUの顔であることに間違いはありません。そのため、内心初代大統領になりたかった政治家は少なくなかったと思います。フランスのシラク前大統領にしても、サルコジ現大統領との関係が悪くなければ、なりたい一人だったでしょう。



 当初から、ブレア英前首相の可能性がささやかれ、サルコジ大統領なども支持していましたが、途中から方針を変えてしまいました。ブレア氏のイメージは米国寄りで、イラク戦争で判断を誤り、EUへの貢献度が少なく、在任中はユーロ圏に入ることにも消極的で、どうもEUの顔となるには違和感を持たれたことは確かです。米国寄りの英国から初代のEU大統領が指名されるのも不自然さがあり、英国という大国のEUへの影響力行使を懸念する声も聞かれました。



 チェコやポーランドなど貧しい旧中・東欧諸国が加盟して以来、英仏独などの大国主導を警戒する声は高まる一方です。英メディアはリスボン条約が発効されても、大国首脳やブリュッセルの高級官僚たちが密室で、重要事項を動かす慣習は変わらないだろうとの見方を示している。歴史的欧州の十字路、統合を象徴する小国ベルギーの首相が初代大統領となるのは悪くないというのが一般的見方でしょう。



 ベルギー自体、この数年、ワロンとフラマンの深刻な対立から国の分裂が危惧され、危機的状況を切り抜けている現状もあります。ですが、ベルギーから初代のEU大統領を出したわけですから、なんとか国として支えていこうとするだろうとの期待もあるでしょう。無名で灰色ネズミなどというあだ名もある風采のあがらない風貌の大統領ですが、果たして世界にEUの存在感を示せるのか、これからが見物です。




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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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