コロナでもヴァカンス 国内旅行急増でフランスの田舎の魅力再発見 

Benodet
ブルターニュ南側の漁村ベノデは有名なリゾート地

 パリに住む義妹のジャックリーヌたちは、今年の夏のヴァカンスはスウェーデンやデンマークなど北欧で3週間過ごす予定だった。いつもはポルトガルやスペインで過ごしていたのが、昨年、クロアチアやイタリアで過ごしたことで、今年は行き先を北に大きく変更しようとしていた。

 年始の1月から2月にかけて夏のヴァカンス計画を練るフランス人は多く、今年も新型コロナウイルスのパンデミックが長引くなど誰も想定していなかったので、国外に向かう予定を組んでいたフランス人は少なくなかった。

 ジャックリーヌたちも同様だったが、欧州中の感染拡大の状況が改善されない中、国外を諦めて今年はフランス西部ブルターニュ地方で3週間を過ごすことにし、毎日、SNSで写真が送られてくる。実はジャックリーヌはブルターニュのレンヌ近郊の出身。この40年間、夏の長期ヴァカンスをブルターニュで過ごしたのは1回しかないのが、今回、さまざまな再発見ができ、興奮気味。

 最初の向かったのはブルターニュ半島の西の端に位置するフィニステールの大きな漁港のあるコンカルノー近くの小さな漁村ベノデ。普通は同じ場所で1週間から2週間は過ごすのを今回は4日おきに移動。まずはその漁村で目一杯、ムール貝や牡蠣料理を堪能することから始まったそう。

 参加しているのはジャックリーヌと夫ロイス、長女の夫婦と学生の次女の5人。最初の漁村から、ゴーギャンの滞在先として知られるポン・タヴェンに寄り、フィニステール県の中心都市、カンペールを観光し多層です。その後、フランス最果てのラ岬に向かい、フィニステールの海沿いの小さな村を転々としたそうです。

 そこは大西洋の荒波が押し寄せる丘陵地帯が一挙に広がり、海を越えてアイルランドなどと紀元前からケルト民族が往来した歴史がある。その海岸を見下ろす丘陵地に、フランス最古と言われるカルヴェールのあるノートルダム・ド・トロノエンの礼拝堂が、忽然と建っていたりする。

 カルヴェールは、イエス・キリストの十字架と弟子たちの受難を表した石像でブルターニュ全土に散在していますが、このトロノエンのカルヴェールは古さという点でも、質的にも他を圧倒しています。

IMG_0432
  美しい港町オーディエルヌ

 さらにそこから県道784号線を東に戻り、美しい港町オーディエルヌで数字を過ごしたそうだ。14世紀から漁港として栄えた街は、今はリゾート地にもなっている。何とこの港で個人的に知っている画家の島田しずさんは、毎年釣りをしていたそうだ。

 その後、彼らが向かったドゥアルヌネの街からは、トリスタン島が見えます。ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』に出てくるトリスタンの名を冠した島です。悲恋の物語は、その起源が未だに不明とされ、紀元前の相当な昔から語り継がれたものであると今では見られています。

 ブルターニュの対岸、英国コーンウェルの叔父マルク王に育てられた孤児トリスタンは、アイルランドに出没する巨人モルオールやドラゴンを倒した英雄騎士であり、最後にはアーサー王伝説の円卓の騎士の一人に数えられた人物。私は妻の故郷でもあるブルターニュを徹底して廻っているので、ジャックリーヌたちの訪れた場所は全て知っており、とても懐かしい。

Rochefort-en-Terre
ロッシュフォール・アン・テールの美しい街並み

 ジャックリーヌたちは、ケルト伝説の残る幾つかの村をあとにし、ブルターニュ南東部のフランスで最も美しい村に選ばれているロッシュフォール・アン・テールを訪れた。人口700人弱の小さな村だが、個性的な村で11世紀に建設されゴシック様式とルネサンス様式の家々が入り混じって残っており、フランスで「花の咲き誇る村」の称号も持つ。

 アメリカ人画家を初め、多くの芸術家や画家を魅了したむらですが、このあたりで公共の場でのマスク着用が義務化され、ジャックリーヌたちの写真もマスク姿に変わった。違反すれば135ユーロの罰金が科されるとあって、さすがのフランス人たちもマスクを着用するようになった。

 そして、今はブルターニュ半島の北東部、ノルマンディーに近いディナールに滞在している。カジノもあるディナールからはロンドン行きのLCCの飛行機も飛んでおり、私も何度もその空路を利用し、ロンドンと往復している。ディナールは英国人観光客が多い高級リゾート地。

Dinard_-_Strande
  ピカソや藤田の愛したディナールのビーチ

 かつては画家のピカソや藤田嗣治が過ごしたビーチもある。ピカソはそのビーチを晩年作品にも残しており、藤田の展覧会も数年前にありました。英国がフランスからの帰国者に2週間の自主隔離を義務づけたことで、滞在していた英国人たちは先を争って帰国したため、町は閑散としているとSNSで送ってきました。

 そこで、ジャックリーヌはレンヌに住む弟二人と合流し、ヴァカンス最後の週を過ごしているところです。そして彼女の感想は国内、それも出身地で過ごすヴァカンスは非常にエキサイティングで、さまざまな再発見があったということでした。コロナ禍の思わぬプレゼントと受け止めているようです。

ブログ内関連記事
インバウンドへのコロナインパクト 経済をドミノ倒しになりかねない現実にどう立ち向かうのか
英国の渡航制限でスペイン大打撃 最大の得意先英国旅行者を失うのは観光大国には致命傷
「働きアリの法則」に見えるフランスのヴァカンス習慣 そもそもフランス人はアリなのか
休めない日本人、休み過ぎのフランス人は互いに学ぶものが多い


 
関連記事

プロフィール

artworks21

Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

検索フォーム

QRコード

QR

コメント

非公開コメント