EV中古車購入にも環境報奨金 コロナ禍をチャンスに変えるフランスのEV化促進政策

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 フランスでは今月9日から電気自動車(EV)の中古車購入に対し、1,000ユーロ(約147,000円)の環境報奨金の支給を開始しました。新型コロナウイルス感染拡大第2波で打撃を受けた自動車産業に対する政府の追加支援策という側面もあります。

 同時に温室効果ガス削減に向け、現行の低公害車の購入を促進するための支援を拡充し、EVの中古車購入にも補助金を支給する措置です。対象は新車登録から2年以上経過した中古車です。実はフランス人の中古車売買は非常に高い関心がもたれている市場です。

 路上駐車している車に「この車、〇〇ユーロで売ります」などと貼られた日本では見ない光景も見られるだけでなく、新車購入の際、その車がいくらで売れるかをほとんどの購入者は考慮しています。例えば、ディーゼル車は燃費が良く、エンジンの耐久性が高いので過去には高くで売れました。

 ドイツ車や日本車、フランス車は中古価格が安定しているとかも重要です。今は20140年にはガソリン車、ディーゼル車の販売は禁止されるので大転換期です。とはいえ20年先のことなので、今もなおガソリン車が圧倒的シェアを占めていますが、すでに排ガス規制でカテゴリーごとにシールが貼られ、大都市への乗り入れが禁止されているので、どのカテゴリーかも重要です。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を機に第1波の今年3月から5月に実施された移動制限措置に伴い、自動車産業支援及び環境対策のため、環境報奨金と買い替え補助金制度を導入し、6月に拡充、8月に改正しました。今回は同措置の期限を12月末から来年6月30日まで延長するもので、環境報奨金は引き続き買い替え補助金と併用して利用できます。

 新型コロナウイルス感染拡大の対策として強化された自動車購入支援措置により、フランスでは6月以降、個人によるEV登録台数は前年同期比でほぼ3倍に増加し、ハイブリッド車(PHEV)登録台数は5倍以上に拡大しました。ガソリン車、ディーゼル車が圧倒的シェアを占めるフランスでは画期的成果です。

 コロナ禍で電車やバスなどの公共交通機関の利用制限や感染への警戒感が高まる中、人々は自動車の利用が、より安全と考えるようになり、補助金も手伝って購買意欲が増したと分析されています。とにかく日本人のように新しいテクノロジーに飛びつかないフランスでは、PHEV購入に対しても消極的です。

 仏経済・財務・復興省によると、2020年1~9月期の全新車登録台数に占めるEVの割合は前年同期の2%から6%に上昇。また、買い替え補助金の申請件数は2020年10月に23,000件となり、今年1月の7,000件から約3倍に増加しています。

 環境報奨金は、EVの新車購入またはリース契約をした場合、個人向けに最大で7,000ユーロ、法人向けに5,000ユーロを支給。新車価格が5万ユーロ以下のPHEVの購入またはリース契約には2,000ユーロを支給する政策は効果を上げているといえそうです。

 一方、買い替え補助金は、2006年1月以前に新規登録されたガソリン車と2011年1月以前に新規登録されたディーゼル車を廃車し、EVまたはPHEVに買い替えた場合、2,500ユーロが支給されます。ガソリン車でも、高い排ガス基準をクリアした1または2レベルに認定された車の買い替えにも1500ユーロが支給されています。

 さらに低所得者層が買い替えた場合、今年7月には補助金を倍増する方針が示されました。今回の措置は中古車市場の需要が多いフランスで、EV中古市場の活性化に繋がる措置でもあります。個人や企業が持つ車両が排ガス規制によるEV化が加速する時期にコロナ禍に襲われ、消費が冷え込む中、危機をチャンスに変える政策を打っているように見えます。

 頭の固いフランス人(他の欧州諸国も同じようなもの)には、自動運転やスマートシティは、今だ程遠いもので、いかに買った時に高額だったディーゼル車を高くで売るかに頭を悩ませている友人は少なくありません。フランスの親族も1人もEVどころかPHEV所有者はいません。

 パリ協定を主導したフランスとしては、アメリカの政権交代でアメリカが協定離脱を中止すれば、世界的な温室効果ガス削減の動きが加速する可能性もあり、見本を示したいところです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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