女性蔑視発言で後進性露呈 ワーク・ライフ・バランス、少子化改善の鍵を握る女性たち

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 30年前、日本でバブル経済がしぼみ始めた頃、盛んに使われた言葉は「成熟社会」「豊かさ」「ゆとり」でした。私は雑誌編集者だったので、一般の人より時代の空気を読む必要がありました。結論として、日本が成熟に向かうには課題が多く、一度、人生を楽しむ天才といわれる妻の国、フランスに住んで、豊かさを味わってみたいと思い、引っ越しました。

 同時に常に人生の中で気になっていた極貧にあえぐアフリカが近いことも、世界最貧状態の国々と成熟した生活を同時に体感できるというのも私にとっては魅力でした。結果、北アフリカの治安分析の仕事と、欧州連合(EU)の行方を追う仕事、さらにはフランスのビジネススクールで教鞭をとることになりました。

 フランスに到着後、兄弟の多い妻の親族との付き合いが始まり、知識としてのフランスではなく、フランス生活文化に奥深く入っていく経験をしました。まず、週末のお決まりの食事会、不慣れな長期ヴァカンス、親族の冠婚葬祭、無論、仕事で出会う国会議員や会社の社長、学生から労働者まで幅広い人々と触れる機会も与えられました。

 そこで感じたことは、あまりにも日本とは程遠いライフスタイルでした。週末の誰かの家での食事会は昼間だと庭のテラスで、夜遅く始まる食事会は3時間以上続き、会話が弾まないことなどありません。とにかく日曜日は店も含め、すべてが閉まっているので働く人は皆無です。

 東京で編集者として仕事に忙殺され、毎日帰るのは深夜という生活を続けてきた私にとっては別世界でした。子供たちも伸び伸びと育ったと思います。無論、今のフランスは景気低迷の長期化で働く時間は伸び、会社の昼食もデスクでサンドイッチで済ませるサラリーマンも増えてるのは事実です。

 今の日本の若者は、がむしゃらに働くよりも自分たちのプライべートライフを豊かにしたいと思っているようですが、その豊かな生活にもお金は必要です。ボロボロになるまで働くことはなくなっても、効率よくお金を稼げなければ、豊かな生活は実現できません。

 それに日本とフランスの何が違うかといえば、プライベートライフを楽しむスぺースが充分確保されていないことでしょう。庭でバーベキューを楽しみ、広いサロンで季節ごとにインテリアも食器も変え
るのは、フランスでは富裕層だけではありません。

 では、その豊かなプライベートライフ、つまり生活の質を追求するのは誰かといえば、圧倒的に女性です。家族と一緒に過ごすことを好み、生活を豊かにする鍵を握るのは女性です。30年前、日本が豊かさを追求しながら実現できなかったのはバブルが崩壊したからではなく、女性の扱いを変えられなかったからだと私は考えています。

 日本のワーク・ライフ・バランスを変えるけん引役は女性です。子育てとの両立という意味でも企業が、女性が働きやすい環境を作り出せれば、とっくの昔に働き方改革は実現していたでしょう。それに少子化も食い止められたはずです。

 日本人が勘違いしているのは、ワーク・ライフ・バランスを追求しているのは、何も先進国だけではないことです。今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長の女性蔑視発言で、日本のメディアは「先進国としてありえない」などと批判していますが、女性が働いているのは先進国だけではありません。

 中国、台湾、ベトナム、インドネシア、タイなどで、社会で働き者と評価を受けているのは女性です。日系企業も積極的に役に立つ女性を雇用しています。女性が会議に参加したら長くなるなどナンセンスです。ミャンマーで女性蔑視が普通なら女性のアンサン・スーチーが尊敬されることはないでしょう。

 国民性分析で有名なオランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士によれば、国別のジェンダーバランスについて、日本は世界で1,2位を争う男性中心社会だとされています。それは先進国に比べてというより、途上国や新興国も含めたランクです。

 ホフステード博士は女性の特性を仕事より生活の質を追求し、相互に支え合う傾向が強いと定義づけています。逆に男性は権力意欲や競争心が強く、仕事に満足感を感じ、家庭生活より仕事にやりがいという特性があるということです。

 仕事の効率論では、メリハリが効果的なことは科学的にも証明されています。異なった特性を持つジェンダーもメリハリを与えることが証明されています。女性がいると会議が長くなるというのは男性脳と男性の特性だけで物事を決めてきた人間のいうことです。

 ワーク・ライフ・バランスは生活にメリハリをもたらし、豊かにしてくれます。日本には儒教の影響による男尊女卑が存在するという指摘もありますが、儒教が人間の上下の地位やポジションにこだわることの影響ともいえます。誰が誰より人間として上なのか下なのかという権威主義は世界を不幸にする考えでしかありません。

 メンツや権力志向が強い男性は、女性の上に立ちたがります。それも実績でその地位を得るのではなく、形として上に立とうとするのは愚かの考えです。

 ここで男性と女性がワーク・ライフ・バランスを取りながら、Win Winの関係になるためには共有できる価値観、目的が必要です。それが幸福追求ということでしょう。これは先進国、後進国に関係ありません。男性の自己満足のために女性が犠牲になるとすれば、Win Winの関係とは無縁です。

 日本が世界に誇れる成熟した幸福な国になるための方策のトップが、女性蔑視をやめ、平等性を確保することです。無論、男性中心社会の方が楽でいいという女性も少なくない現実はありますが、価値としての平等性を追求することが重要です。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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