国を救った政治家ド・ゴール フランス人が最も尊敬する愛国の政治家が眠る田舎の村

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  巨大なロレーヌ十字が建つコロンベ=レ=ドゥ=ゼグリーズ村

 フランスにはド・ゴール主義者という政治勢力があり、ド・ゴール将軍の命日には、フランス北東部オート・マルヌ県にあるコロンベ=レ=ドゥ=ゼグリーズ村にあるド・ゴールの墓に参拝する習慣があります。

 第二次世界大戦の英雄であり、かつ戦後のフランスの存在を世界に示したフランスの政治家であり、著述家でもあるシャルル・ド・ゴール将軍(1890-1970)は、フランス人が高く評価する人物です。人口400人足らずのド・ゴールが家族と過ごした村に埋葬されていたのは本人の希望で、それまで村の名前を知る人すらいませんでした。

 パリからおよそ200kmにあるコロンベには、ラ・モンターニュ(山)と呼ばれる緑の丘があり、山頂には「自由フランス」の象徴である巨大なロレーヌ十字がそびえている魅力的な村です。そのふもとには現在、シャルル・ド・ゴール記念館が建っています。

 同記念館に行けば、ド・ゴール将軍を通じた20世紀フランス史を学ぶことができます。同時に村にはド・ゴール将軍とその家族が暮らした、1934年にド・ゴールが購入した邸宅、ラ・ボワスリーが残っています。建物は一般公開されていますが、今なお存命中の99歳のド・ゴールの息子、フィリップ・ド・ゴール提督の所有となっています。

 建物は1810年代に建設され、ド・ゴールが中佐時代に購入したもので、ダウン症の娘アンヌのためでもあったといわれています。軍務の合間、ラ・ボワスリーで家族とともにヴァカンスを過ごしたシャルル・ド・ゴールは、思索や執筆に最適なこの緑豊かな田舎を大変愛していたそうです。

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  コロンベ=レ=ドゥ=ゼグリーズ村にあるドゴールの自邸ラ・ボワスリー

 この館も第2次世界大戦では、ド・ゴール家が英国に亡命し、ドイツに没収され、ドイツ軍の野戦病院として使われていた時期もありました。戦後、再びド・ゴール一家が戻り、今は20歳で亡くなった娘のアンヌとともに眠るド・ゴールの巨大な十字架がそびえる墓があります。

 生前、ド・ゴール夫妻は知的障害者のためのアンヌ・ド・ゴール財団を設立し、ド・ゴールの著書の著作権料の半分をこの財団に寄付したことが知られています。

 この村にはシャルル・ド・ゴール記念館もあります。44mもの高さのロレーヌ十字が建つ記念館は、四方どこからでも見ることができます。およそ35ヘクタールの緑が広がる場所で、ド・ゴール将軍の死後18ヵ月後の1972年にロレーヌ十字の除幕式が行われ、レジスタンスとして戦ったすべての人々へ捧げるとされています。

 2008年に開館したモダンな建物の記念館には、20世紀の2つの大戦を戦ったド・ゴールの人生をたどりながら、20世紀のフランス史を垣間見ることができます。実は同年、パリにもサルコジ大統領(当時)とシラク前大統領の手によって、ナポレオン・ボナパルトの墓もあるパリ中心部アンバリッドの一角にド・ゴール記念館が開館しています。

 最後はコンベで執筆生活を続けたド・ゴールは、彼の遺書に従い、国葬はせず、コンベの小さな教会で行われた葬儀に参列したのも家族とフランス解放のレジスタンス同志たち、そしてコロンベの住人たちだけでした。そして娘アンヌとともに、この地に埋葬されました。

 戦後、大統領になったド・ゴールは「支持率が5割を切ったら辞任する」といい、清廉な政治家としても知られていました。第1次大戦ではドイツの捕虜になり、フランスのために生涯戦い続けたド・ゴールは名誉を好まず、愛国者らとともに戦い、小さな、しかし、素晴らしい自然に囲まれた村に埋葬されました。

 フランス独自の政治哲学、自主防衛を掲げ、北大西洋条約機構(NATO)から距離を置いたド・ゴールは、今また、領海や領土を侵し、覇権を狙う権威独裁国家との戦いに備えなければならない時代、かつてドイツに侵犯されたロレーヌ地方の紋章であり、ジャンヌ・ダルクの愛国の象徴であるロレーヌ十字は、自由世界を守る紋章ともいえそうです。

 各国が自国の主権と世界との関わりをリセットする時代にあって・ド・ゴールは脚光を浴びていまが、重要なことは私利私欲がなく、名誉も求めない愛国者ド・ゴールの姿勢にあるといえそうです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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