統治が危うい新興国・途上国 政府の制御が効かない原因は覇権主義を容認する国際ルールにある

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 米中対立がポストコロナの世界の中心課題となる中、ミャンマーやタイなどで反政府勢力の抗議デモが激化し、政府が統制を失う現象が起きています。グローバル化は中国覇権主義とコロナ禍で足踏み状態に陥り、世界を動かす主要プレーヤーがいないGゼロ時代に入ったなどいわれています。

 今、世界で何が起きているのかを正確に理解することは困難を極め、分かっていることは先の見えない不確かな状況の中で、米中の技術覇権争いと米国に見られる過去にない国内の分断、そして新興国、途上国の統治体制が、より不安定になる現象が続くということです。

 同時に新興国、途上国に起きていることを単純な民主化の葛藤と、たとえば東南アジアのように地政学的に大国中国に翻弄される側面だけから分析するのが正しいのかという疑問もあります。これらの新興国、途上国の社会上層部の人々の意見に耳を傾けてみると、彼らに不都合な国際ルールが存在し、大国に翻弄されてきた状況が浮かび上がってきます。

 逆に言えば、環境問題で浮上した途上国の主張に似ていて、実際、温室効果ガスを大量に排出して経済発展した現在の大国が、地球が汚れ気候変動が深刻化したから、途上国もCO2排出量削減に協力すべきというのは、あまりにも都合のいい話だと受け止めざるを得ない話です。

 大国が途上国に援助するのも、結果的に途上国は債務を増やし、債権を持つ大国は損はしない原理です。大国の大企業が安い労働力を求めて途上国に生産拠点を移すのも、途上国が得るものが多いとはいえない側面もあります。外国からの投資で技術の強引な盗用で発展した中国は特殊で、恩恵は貧しい農民にまではいきわたりません。

 外国からの投資で発展目覚ましいべトナムでも、食べるために外国に出稼ぎを強いられる農民は多く、かつて日本で実習生だった女性がベルギーで違法就労のための移動で使用されたトラックの中から遺体で見つかった例をみると、ベトナムが貧困から根本的に抜け出したとは到底いえません。

 当然、彼ら取り残された貧困者も自国の統治体制を危うくする怒りを持つ存在です。つまり、グローバル化の美名のもと、実は勝ち組は1部に過ぎず、多くの犠牲者を出してきたことが、脱グローバル化運動を産んだのも事実です。それでもグローバル化はポストコロナでも続くでしょう。

 そこで新興国・途上国から見た視点がグローバル化する世界経済のルール変更に有効と私は考えています。グローバル化に忍び寄った有害なウイルスは自己中心というウイルスだと思います。「支配した者が全ての利権を手にし富が集中する」という考えです。

 テクノロジーの世界でも5Gに象徴されるようにプラットフォームの規模が大きく、テクノロジーは大きな支配権を手にする可能性があります。当然、政治的覇権を国策とする中国のような国は、テクノロジーを駆使して、支配を勝ち取ろうとします。

 新興国・途上国は抵抗する手段も持っておらず、ここでも大国に翻弄されるだけで、どこにも透明性はなく、WinWinの関係もなく、覇権戦略の犠牲者になっています。国内で広がる格差や不平等の原因も国内より外国からの投資によって引き起こされているのが現状です。

 米中の技術競争で複数のプラットフォームが対立しながら共存するという状態に適応していくことが求められる時代に入っているといわざるを得ない状況です。そこで私は日本に期待しています。なぜなら支配を前提としない戦略で戦後、日本は経済発展してきた経緯があるからです。

 無論、支配を前提とした米国に追随したことの恩恵は計り知れませんが、それでも地政学的、技術的覇権主義を根底に持っていたとは到底思えません。つまり、支配するかされるかで勝負が決まる、支配するものがルールを作るという妄想にとらわれずに大国化した稀有な国だといえるでしょう。

 そこでグローバル化に侵入したウイルスに対抗するワクチンとして、ために生きる哲学を普及させることがポストコロナ時代には重要だと考えています。新興国・途上国もともに発展していくことに繋がるもので、ために生きるには犠牲も覚悟すべきでしょう。

 何を綺麗ごとをいっているのかといわれるかもしれません。日本も支配意欲を持つべきで、今後はつぶすかつぶされるかの戦いだという人もいるでしょう。しかし、その自己中心の姿勢が文明の滅亡をもたらしてきたのが歴史であることも事実です。

 今、世界中の多くの若者がビジネスが社会貢献に繋がる道を模索しているといわれています。テクノロジーの同様です。高度なプラットフォームは人を幸せにするツールであって、覇権の道具ではないはずです。日本は存在感を示す時だと思います。





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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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