パリの国別対応マニュアル 五輪・パラで必要だった世界最大のインバウンド都市の異文化対応

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 コロナ禍が始まった2020年2月、世界中の観光業界は悪夢に突入しました。最初は数週間、せいぜい最大3か月と思われた我慢の期間は1年を超え、ワクチン接種でインバウンドの期待が高まっていますが、インド変異株の猛威で、この夏も期待薄となると事態はさらに深刻です。

 私の個人的な予想では、東京五輪・パラリンピックは無観客での開催になると思われます。理由は、今月開催された英コーンウォールでのG7後、感染が終息に向かっていた英国にもかかわらず、コーンウォールだけが感染急増に襲われたことです。

 G7との因果関係は明らかではありませんが、最新の注意を払った国際会議でもインド株恐るべしでした。各国首脳、関係者、プレス、それにいつもの反グローバル、環境保護派の過激な活動家が集まったG7は、東京5輪・パラと似たような状況でした。水際対策、バブルという囲い込みの限界を思い知らされたといえそうです。

 とはいえ、世界はインバウンドの再開に大きな期待を寄せています。欧州では観光業のGDPに占める割合が大きいギリシャ、スペイン、イタリアが早くからワクチンパスポートの導入を強く希望し、今回の観光業の復活に大きな期待を寄せています。

 日本は来日するのは選手団、大会関係者、メディア関係者に限られますが、昨年来の外国人訪日者が激減した状況からすれば、大きな変化といえます。本来なら、多くの宿泊施設、レストラン、観光ガイド、タクシーの運転手などに役立ちそうな国別対応マニュアルは、1部の関係者にしか役立たない可能性もあります。

 しかし、希望的にはワクチン接種の普及でインバウンドが復活する日は近づきつつあるのも確かだと思います。そこで興味深いのはパリの商工会議所が作成している14か国の観光客国別対応マニュアルです。とにかく、世界最大を記録し続けるインバウンド大国フランスの経験に基づく質の高い情報だからです。

 フランスはコロナ禍で外国人観光客は消えた状態ですが、実は2020には年間1億人の外国人旅行者達成をめざし、目標達成直前でした。そのフランスの中でも最も観光客が訪れるパリの得ている情報は貴重です。この対応マニュアルのことは、同ブログで何回か触れましたが、実はスマホ時代に入り、進化を遂げています。

 パリ中のホテル経営者やレストランのオーナー、さらにはタクシーの運転手に配布されている同マニュアルは、実は海外から批判から生まれたものです。世界最大の観光都市と豪語しているくせに、訪仏外国人の評価は非常に低く「愛想がない」「冷たい」「サービス精神ゼロ」と批判されたのがきっかけでした。

 その悪評を払しょくために国別対応マニュアルが作られたわけですが、個人主義でプライドの高いフランス人が、サービスの概念を理解するのは容易でないの現実です。お客様は神様で完ぺきな「おもてなし」のためなら、どこまでもへりくだる日本人とは大違いです。

 それはともかく、各国の訪問者の特徴の説明は経験値が豊富なだけに興味深いものがあります。たとえば旅行好きのイギリス人は「本物志向だが、リラックスするのを好む」「他の国の観光客に比べ名所見物することが少ない」「出されて料理に何が入っているか知りたがり、料理についての説明を高く評価する」とあります。意地悪な見方をすれば味の疎いイギリス人の見栄かもしれません。

 中国人は「何よりもまず、豪華ショッピング」「にこやかに応対し、中国語で挨拶をすると、中国人は非常に満足する」「団体旅行では、中国人は円卓で、早い時間帯に速く食べることを好む」とあります。確かにパリのレストランで、ものすごい勢いで食事する中国人の団体客」をよく見かけます。

 アメリカ人は「サービス料込みの料金表示を期待している」「実際に支払う額についての説明を求めており、家族や友人の勧めに従うことが多い」「英語での対応を望む」とあります。興味深いのは日本人の最優先事項は「安心・安全」とあることです。「控えめだが、要求は多い」という指摘もあります。

 最近の特徴には、オランダ人は「観光アプリを求める」、ロシア人は「スマホやタブレットを使いこなすハイテク好きで、ロシア語のアプリをダウンロードするため、無料Wi-Fiアクセスポイントの求め、切符など何でもオンライン購入を望む」とあります。

 同マニュアルの便利さは各国の訪問者の特徴を端的に手短の説明していることです。接待する側はとっさの判断が要求されることが多いので助かります。無論、注意深く相手を観察し、柔軟に対応することも重要ですが、予備知識も重要です。

 実はフランスに習い、英国にも国別対応マニュアルがあります。面白いのは「カナダ人にアメリカ人といっては絶対いけない」「日本人の要望には、たとえ具体的に言われなくても、すべて先回りして対応すること」「日本人客には、はっきり「ノー」と言わず、もっと感じの良い言い方を考えなければならない」とあるのも、いい得て妙です。

 本来なら、東京五輪・パラで得意の「おもてなし」に異文化理解を加え、きめの細かい個別対応を経験するいい機会だったわけですが、インバウンドの回復の後には必要とる情報だと思います。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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