コロナ禍で世界に広がる不信感 政府、WHO、製薬会社、信頼再構築が急がれる

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 コロナ禍がもたらしたのは健康被害と経済ダメージだけではなく、人々の間、国同士、さまざまな分野で不信感が広がり、分断に繋がっています。この状況は深刻でwithコロナの時代に人類が協力し合って生きていくことを困難にしています。

 世界保健機関(WHO)は、アメリカが3度目のワクチンの2度目の接種を8カ月前に終えた医療関係者に対して9月から実施する方針を打ち出したことに対して「3度目を打つ根拠がないだけでなく、途上国との不公平感をさらに広げる行為」と強く非難しています。

 英オックスフォード大学の研究チームは英国の一般市民から集めた検体を分析し、米ファイザー・独ビオンテック製および英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを2回接種後のデルタ株に対する有効性が3カ月以内に低下するという結果を得たと発表しました。

 一方、米ウォールストリートジャーナルは、新型コロナウイルスの変異株「デルタ型」は、従来型のウイルス株より高い確率でワクチンの防御を突破しているとみられるが、ワクチン接種完了者の感染は全体のごく一部にとどまり、症状も軽い傾向にあるとの独自の分析を明らかにしています。

 とりあえず、ワクチン2回接種者が新型コロナウイルスに感染するブレークスルー感染は0.1%にとどまっていると指摘しており、3度目の接種を急ぐ根拠は希薄だという見方を示しています。WHOも「英国の発表だけで、3度目の接種を急ぐ根拠にはならない」との見解を示しています。

 それよりWHOは、世界が抱えるワクチン格差問題の観点から、豊かな国がワクチンの大量入手に走り、途上国にワクチンがいきわたっていない問題に危機感を抱いていると警告を発し続けています。

 しかし、世界中の特に先進国に住む人々は、そもそもWHO事態に強い不信感を抱いています。理由は昨年1月に中国・武漢を発信源として世界に拡散した新型コロナウイルスについて、中国に遠慮して本格的な調査を行わず、結果、未だにウイルスの正体が分からないままに世界中で死者を出し続けているからです。

 問題解決は原因究明から始めるのが常識なのに、原因究明が隠蔽が得意な中国で完全に証拠を消してしまっているだけでなく、それを追求する唯一の国際機関であるWHOが及び腰な中、結果的に多くの犠牲者を出しているわけですから、WHO不信は根強いものがあります。

 加えてワクチンそのものについても製薬会社と政治の癒着や莫大なワクチン特需に群がる人々によって不信感が広がり、ワクチン懐疑派を生んでいます。もともと製薬会社は透明性が薄く、多くが闇に隠されている業界ですから、PCウイルスとウイルス駆除ソフト開発の関係に似て、製薬会社がウイルスを開発したのではという疑念も消えていません。

 インド由来のデルタ株の拡散で、過去にない感染が世界に広がる中、政府の出す方針への不信感も高まっており、感染を抑えられない中で国民に厳しい行動制限を課す政府へ批判も強まるばかりです。政治不信は世界中に広がっています。

 フランスの調査では、明らかに貧困層、移民層に感染者や死者が多く、貧富の差がコロナ感染被害者に明かに影響を与えていることも明かになりました。アメリカでは昨年来、ロックダウンしても働き続けるごみ収集などの携わるベーシックワーカ―に犠牲者が多いことが指摘されてきました。

 世界的に見れば豊かな国はワクチン接種が進み、医療体制も充実していることから、助かる可能性も高いのに比べ、途上国はワクチンも医療体制も足りていません。そのため、途上国には先進国への不信感が広がっています。

 EUも昨年、感染が広がり出した2月、EUとしての感染対策は出せず、域外からの水際対策もないままに感染を広げてしまいました。つまり、コロナ対策の連携は未だに取られていない状況です。これではEU不信が加盟国、特に経済的弱小国に広がるのは当然です。

 これらすべてに欠けているのは、為に生きるという精神です。強者は弱者のために、持てる者は持たざる者のために生きる精神が不在していることが、特に持てる者の側から露呈しました。キリスト教精神でも犠牲を惜しまず為に生きることですが、コロナ禍で一挙に皆が保身に走っているようにしか見えません。

 何を甘いことを言っているのかといわれそうですが、世界に広がる不信感は深刻な人類にダメージを与えています。与えられる者が与えても感謝もされないというかもしれませんが、そんな損得勘定の見返りのために行うものではないはずです。無論、相手側に報恩精神もないのは問題ですが、それは覚悟で与えるものでしょう。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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