フランスで16歳から投票権? 左派賛成、保守反対、大統領選の公約にも登場

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 来春の大統領選に社会党から立候補しているパリのイダルゴ市長は「16才からの投票権」を公約に掲げています。大統領選には間に合わないにせよ、社会党は12月初旬には議員立法法案として国会に提出すると予告しています。左派は熱心、保守派は反対の構図になっています。

 欧州では、1970年代まで選挙権年齢は21歳が一般的でした。それが多くの国々で国政選挙の選挙権年齢の引き下げられ、現在、オーストリアは16歳、フランスを含む、他の欧州連合(EU)加盟国は18歳となっています。若者の教育水準が上がる中、1970年代といえば学生運動が盛んな時期で若者の政治参加が求められていたのも年齢引き下げの理由の一つといわれています。

 今はその逆で、若者の政治離れは欧州でも顕著で、政府は投票率を上げるために苦労しています。私の経験では、恵まれた層の若者ほど政治に関心が薄く、長年教鞭をとった大学はビジネス系ということもあり、さらに関心が薄いという現状がありました。

 とはいえ、日本の若者より家庭事情が複雑で精神的成長が早いフランスの若者は、今の18歳の選挙権に違和感を感じることはありません。フランスの16歳、17歳の人口は最新の数字で約150万人で総人口に占める割合は2.3%、高齢化が進むフランスでは人口ピラミッドのすそ野は狭まる一方です。

 実際、社会党が法案を提出し、仮に議会で可決されたとしても選挙の1年以内の制度改正は適応されないため、来春に実施される大統領選と国民議会選挙には影響はありませんが、選挙制度は民主主義政治には極めて重要です。

 左派勢力にとっては「16才からの投票権」は広く合意が得られている要求事項であり、共産党から環境派政党のEELV、急進極左の「不服従のフランス(LFI)」に至る勢力まで支持しています。民主主義の進歩という主張です。一方、中道のマクロン大統領は極めて慎重で、前回2017年の大統領選でも公約にありませんでした。

 マクロン氏が立ち上げた与党・共和国前進(LREM)内でも意見は分かれており、閣僚のうちボーヌ欧州担当閣外相は、大統領選において議論すべき問題だと主張している一方、LREM所属のジョリベ下院議員は、選挙権と刑事責任を十全に問われる年齢を共に16才に引き下げることを提案する議員立法法案を提出しています。

 右派と左派の寄り合い所帯のLREMは、このような問題では議論が常に分かれるところです。一方、中道右派の野党・共和党内の有力者はこぞって反対しています。また右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン候補は明確に反対を表明しています。

 賛成派の主張は「16歳から17歳の彼らは、直面する現実社会を非常に明快に認知しており、彼らの中では”最初の確信”がすでに築き上げられている。私たちが経験している危機は、16歳から17歳の若者にも共有されている」と社会党の国会議員は述べています。

 結果的に自治体レベルから国政に至りまで、この世代の意見を考慮に入れることは適切だということで、自分の街のインフラ、経済活動、安全などを肌で感じ、政治への期待度を示せる年齢と指摘しています。反対派は政治的判断ができる域に達していない未成熟さをしており、どの国でも同様な議論が展開されそうです。

 ウエストフランス紙は「若者はそもそも同質のグループではなく、不安定な思春期に反抗的になって環境保護団体に引き付けられる者もいれば、親の保護下で満足している若者もいる。専門家の中には若者の間の二極化を指摘しています。反対派の多くは議論が分かれる問題で理解力のない若者の投票行動によって政治が左右されることを警戒する意見もあります。

 いずれにせよ、2017年の大統領選挙前にも同じような議論があったフランスなので、いつか本気で話し合われる時が来る可能性は高いといえます。




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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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