バイデン政権1年の通知表 対中外交、経済環境政策、アフガン撤退、コロナ対策で説得力なし

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 最近、アメリカの最新の失業率が3%台に回復したことについて、バイデン米大統領は自身の経済政策が機能していると自画自賛した。これを信じるのは民主党支持者で大半の国民はコロナ禍からの回復によるもので、バイデン氏の実績とは受け止めていないでしょう。

 2021年のアメリカは、新型コロナウイルスのパンデミックに苦戦し、今年に入り、1日の感染者数が100万人を超える事態となり、バイデン政権のコロナ対策の評価はすっかり下がってしまいました。同時に感染症の専門家への不信感も広がり、政治不信、専門家不信が深まった1年でした。

 トランプ前政権から受け継いだ対中強硬政策は、トランプ氏が国益重視の交渉人だったのに対して、バイデン氏は民主主義や人権問題などのイデオロギーの原則論で中国と戦おうとしており、逆に中国はロシアと急接近し、途上国を味方につけて社会主義の流布を加速させています。

 原則論外交は交渉型外交と異なり、抜け穴が多く、中国は新たな抜け穴を探すのに余念がありません。とはいえ、習近平主席にとっては昨年は、台湾支持が世界に広がり、欧州連合(EU)も台湾とはより緊密な関係を構築する方向にあります。北京オリ・パラを前にオミクロン株の拡大も中国政府にとっては試練で、女子プロテニスプレーヤーの共産党幹部による性暴力も汚点でした。

 しかし、トランプ政権のようにアメリカが中国を追い詰めたというよりは、国際社会が圧力をかけた結果で、対中政策でバイデン政権が実績を上げたとはいいがたい状況です。

 最も非難されるべき外交の失敗は、アフガニスタンからの撤退です。今や子供を売って餓死を食い止める国民も急増するアフガンを見れば、人権外交を振りかざすバイデン政権にとっては歴史的失敗というしかありません。

 民主主義を代表する超大国アメリカが弱体化する中、ロシアは強権政治のベラルーシを利用して大量の移民をポーランド国境沿いに送り込み、ウクライナへの侵攻をうかがっています。民主的手続き不要の独裁国家の中国など専制主義国家の前に民主主義の機能不全と無力をさらしたのがバイデン政権でした。

 環境政策でも巨額の予算案が議会で拒否され、世界的リーダーシップは示せていません。メキシコとの国境問題では、トランプ政権の強硬策を「人権無視の非人間的政策」と非難したバイデン政権は、メキシコからの不法移民に対して、なすすべがなく、非人道的状況を作り出しています。

 2021年の勝者について、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、ロシアのプーチン大統領を1番に挙げています。長年、中国の急激な成長による世界舞台での存在感の前でロシアは悲哀をなめていたのが、ベラルーシの独裁者ルカチェンコ大統領を支援することで「カフカス地方からバルカン半島に至るまでの地域で、ロシアの影響力が強まった」と指摘しました。

 今は暴動が起きているカザフスタンの騒乱鎮圧に治安維持軍をロシアは派遣し、存在感を示していますが、石油生産国のカザフスタンと国境を接する中国に危機感を強めています。カザフスタンの騒乱をプーチン氏は外国勢力によるものと主張していますが、ロシアの関与はないのでしょうか。

 専制主義のロシアや中国は原則論や善悪と動くことhないので、カオスのような状態には逆に強く、あらゆる謀略を仕掛けてくることで、自国を有利に導こうとしています。

 バイデン政権はアメリカが世界の警察官であることを辞めることを明確なメッセージにしており、国際協調外交を前面に出していますが、たとえば北京オリ・パラで外交的ボイコットを表明し、同じ価値観を共有する国々に呼びかけましたが、フランス、イタリアは同調していません。

 自由と民主主義の国々の結束では、アメリカがオーストラリアに原子力潜水艦を提供したことで、オーストラリアと潜水艦購入で契約していたフランスを怒らせました。米英豪のオーカスでも、太平洋地域の領土を持つフランスは排除され、安全保障面での国際協調とは程遠い、荒っぽい外交を展開しています。

 バイデン氏はコアな民主党員にしか支えられておらず、国民の半分は支持していない状態が続いています。無党派層にまで支持を拡げなければ、中間選挙で民主党は野党になる可能性も高いと指摘され、逆にトランプ支持者を勢いづかせています。

 米連邦議会への乱入から1年が経ち、トランプ氏が米国の民主主義を脅かしたとバイデン氏が批判の演説を行ったことを日本のメディアはバイデン支持の立場で報じていますが、共和党にとっては、大統領選挙でバイデン陣営が不正を行わなかったら、そもそも乱入事件は起きていないと批判しています。

 つまり、バイデン氏率いる民主党こそ、民主主義を危険に晒したというわけです。いずれにしてもバイデン政権の喫緊の課題は、コロナ禍で弱みが露呈した民主主義の健全化と民主主義陣営の結束を強固にすることでしょう。そのためにはメディアが宣伝する嘘の報道に惑わされず、問題の本質を見極める目を養うことが重要といえそうです。



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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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