改革ターゲットは幸福追求 Z世代がもたらす社会変化はリスクにもチャンスにもなりうる

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 Z世代に個人的に興味を持っていますが、彼らが嫌いな言葉は「義務」だそうです。ある時、「1度しかない人生だから意味のある人生を送る方がいい」とZ世代の若者にアドバイスしたことがあります。
 すると彼は「意味」を「意義」と聞き間違えて、「なぜ、意義のある人生を送る必要があるんですか。僕は意義なんてどうでもいい」と激しく反発されました。話を聞くうちに義務という言葉に拒絶反応があることが分かりました。

 つまり、「べき論」で、意義はプレッシャーだというわけです。人間どう生きるべきかという話は苦痛でしかないわけです。それはハードルが高く、ピンとこないことを無理やり押し付けられ、自由の制限、自分の気分を制限することに繋がるからでしょう。

 無論、彼らも30歳過ぎれば、社会の厳しさの前に屈して飼いならされていくのかもしれませんが、無理なものは無理という若者も増えています。原因の一つは親の世代が幸福に見えないために親の世代に説得力がないからともいえます。

 日本人を観察すると、明らかに義務感、使命感で生きる人生観は変化しつつあるように見えます。自分の声に耳を傾ける若者は増えているといえます。しかし、自分が追求する満足感が浅ければ、30過ぎたら、もともと免疫力がないので社会に飲み込まれてしまうでしょう。

 そもそも追求する満足感自体が自分を掘り下げるものではなく、気分でしかない場合、うつろいやすく、意味のある人生にはならないでしょう。ただ、最初から義務感を前面にした貧しい人生観が消えつつあるのはいいことと個人的には思っています。

 コロナ禍、ウクライナ危機、インフレ、エネルギー価格高騰など、景気後退の予兆は世界中で見られます。先行き不安は世界中の若者を襲っており、終身雇用が消えた日本では、転職が当たり前でサバイバルに生きていく教育も訓練もない若者は哀れというしかありません。

 アメリカを中心としたインフレ抑制のための政策金利引き上げが主流の中、日本の場合は金融緩和策を継続していますが、日本経済を再生させる鍵は日本的商習慣と労働慣習の全面的見直しでしょう。これが若者に希望を与える鍵を握っています。

 この10年間、日本企業の衰退を指摘する声は消えていませんが、それを感染症や戦争、為替のせいにするだけでは衰退は食い止められないのも事実です。世界中どこを探しても現状維持が危機を乗り切る鍵と思っている国や組織はありません。「このままで大丈夫」は終わりを意味するでしょう。

 バブル崩壊後の30年、マイナス成長や低成長は先進国入りした国の運命でもあるわけですが、ならば社会は成熟し、人々の生活は豊かになったかといえば、未だに自転車操業を続け、過重労働、長時間労働で危機を乗り切ろうという考えが亡霊のようにしつこく徘徊しているように見えます。

 必要な改革に影響を及ぼす多様性は、村社会の日本では新しいテーマですが、村という枠組みを出る勇気をなかなか持てないのが現状です。働き方改革の鍵を握るのも多様性で、ジェンダーやさまざな人種の人々が魅力を感じ、満足感を与える職場づくりは喫緊の課題です。

 スキルアップ、キャリアップも重要ですが、楽しんで仕事をすることも重要です。それも継続性のないその場しのぎの楽しみではなく、感動や喜びを継続的にもたらす職場の創造が求められています。アメリカの強さは世界一幸福追求度が高いからだと思います。

 継続的に自分を満足させる鍵は、自己中心的な気分ではなく、人や社会のためになることで感謝され、循環するものです。べき論に苦痛を感じるのは目標がないからで、目標を達成する喜びを追求するなら義務感はモチベーションに変わるはずです。

 義務意識が嫌悪を生んだのは、「何のため」という目標が抜け落ち、手段が目的化したからだと思います。Z世代を活かすも殺すも大人世代の責任です。自分の声に耳を傾けると同時に制限された環境で自分を満足させる術を身に着けるのが大人になることを教えるのも社会です。

 そうでなければ、Z世代は自己中のまま何の役にも立たない将来を潰す存在になるリスクもあります。その意味で日本は大きな岐路に差し掛かっていると強く感じています。




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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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