危機の最前線に立つポーランド 過去の歴史を鑑み平和ボケEUに確実に変化をもたらしている

 ベラルーシのルカシェンコ大統領がウクライナに侵攻して8か月が経つロシアに対して、さらなる協力を表明したことで、隣国ポーランド、リトアニアなどに緊張が走っています。ポーランド政府はベラルーシに住むポーランド人に対し退避勧告を出し、両国関係は過去にない緊張状態にあります。

 そもそも昨年、ルカシェンコ大統領が欧州連合(EU)をめざす移民を自国のポーランド国境に集結させ緊張を高めた経緯があります。今回はベラルーシ政府がロシア軍への協力に本腰を入れると表明し、その理由の一つが、ポーランドやバルト3国に駐留する北大西洋条約機構(NATO)軍の脅威が迫っていることを挙げています。

 専門家の間では、ベラルーシ軍がロシア軍と共にウクライナ戦争に加わる可能性は低いとしていますが、ルカシェンコ氏がロシアへのコミットメントを強める意思表明をしたことは、少なからず影響を与えています。そのため、今後、ベラルーシ内にいるポーランド人に危険が及ぶ可能性が高いとして今回の勧告を行ったわけです。

 ウクライナ危機は、EUに根本的な変化を与えています。たとえば、ポーランド政府が司法に介入する、いわゆる「法の支配問題」で関係が悪化していたEUの欧州委員会は今年6月、止めていた新型コロナウイルスからの復興を支援する基金からポーランドへ354億ユーロ(約4兆9000億円)の分配を承認しました。

 同国における司法の独立の強化が条件としていますが、承認した背景にはポーランドがウクライナ難民を大量に受け入れ、さらには対立するロシアとの最前線に立たされているからです。意見の対立するEUが、ポーランド経済を疲弊させることはEUにとっても命取りになる可能性があるということです。

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 過去に独ソ不可侵条約が結ばれた1939年、ポーランドは西からナチスドイツ、東からはソ連に攻められ、両国による分割統治を受けた悪夢があり、バルト3国はソ連に併合されました。多少、EU基準に合わないことがあっても、EUはポーランドを放置するわけにはいきません。

 理想や原則を口にしても、ソ連の支配から解放されて、たかだか30年で社会主義体制から民主主義体制に完全に転換できると考える方に無理があります。それはハンガリーも同じです。それにEUが疑問視するポーランドの法の支配の中身は、西側EUが支持する同性愛やLGBTなどリベラルズムを排除しようとしたからです。

 欧州大学院大学のEU法専門のフランシス・スナイダー教授は東西冷戦終結後の旧東欧諸国を調査し、「彼らが民主主義を本当の意味で理解するには半世紀以上かかるだろう」と指摘しています。その意味でEUは急ぎすぎているともいえます。

 いずれにせよ、ポーランドを初め旧中東欧諸国が、ロシアの脅威を訴えても聞く耳を持たなかった独仏などEUの西側大国は今、彼らの警告が現実になる中、EU自体の認識に大きな変化をもたらしているのは確かといえます。



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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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