ウクライナ紛争をどう終わらせるか 少なくとも世界が団結してナチスを息絶えさせた教訓を学べ

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 東西冷戦後の世界のパラダイムを根底から変えようとするロシアの試みの中心にいるのがウクライナです。そのウクライナのユーリヤ・ティモシェンコ元首相のパリでの話は、きわめて興味深いものでした。彼女は今でもウクライナに愛国心を燃やす現役の国会議員であり、今、世界とウクライナに何が起きているかを伝える優れた政治の一人といえそうです。

 フランスを訪問中のティモシェンコ氏は仏時事週刊誌レクスプレスのインタビューに答え、もし、ウクライナが今回の紛争前に北大西洋条約機構(NATO)に入っていれば、ロシア侵攻は起こらなかったと語り、特に仏独の対露経済関係優先の姿勢を批判しました。

 ロシア侵攻開始から500日後、7月11日と12日にビリニュスで開催されるNATO首脳会議の直前に彼女がパリを訪問した目的ははっきりしていました。彼女は手遅れになる前にプーチン露大統領を逮捕する必要性を西側諸国に警告しに来ました。

 ティモシェンコ氏は「20 世紀に全世界が団結してナチス政権を終わらせることができていなかったら、私たちはまったく異なった世界に住んでいたでしょう。」と述べ、ウクライナ国民はクリミアを含むロシアの奪われたすべての領土を取り戻すことしか考えておらず、プーチン政権の完全崩壊以外を選べば、何度でも同じようなことが起きると予言しました。

 「もし、ウクライナがその領土の主権と平和を外圧によって諦めれば、呪われたロシア政権は永続するだけでなく強化され、独裁政権が世代から世代へと再生産されることになるでしょう」と述べ、「最悪の態度は、彼らと共存するために彼らをなだめようとすることで「問題解決にはならない」と述べました。

 ティモシェンコ氏は、プーチンが20年近く前からNATOが引いたロシアとの国境を納得しておらず、その変更を実行したいと考えていることを西側は本気だとは受け止めてこなかったことを指摘しました。

 「よく、戦争はいつ終わるのかという質問を受けます。最初からウクライナに必要な兵器と弾薬を提供する決定が下されていれば、この事態は1年前に終わっていたかもしれない。私はさらに踏み込んで、2008 年にブカレストで開催された NATO 首脳会議で 2 か国(仏独)がウクライナのNATO加盟に反対していなかったら、この戦争は始まることはなかったでしょう」と述べました。

 彼女とNATO、特に仏独の認識の違いは、彼女(あるいはウクライナの現政権)は、ロシアのウクライナ侵攻はNATOが引く国境線を崩そうとする第1歩に過ぎず、次は旧中東欧諸国に足を延ばすだろうという主張に対して、仏独はNATO加盟国でないウクライナをロシアが手に入れてもNATOの国境を超えることはしないだろうということでしょう。

 では、戦争はどうしたら終わるのかという質問に対して、「まず第一に、戦場でのウクライナの決定的な勝利。その日が来れば、プーチン政権は崩壊し始めるだろう。なぜなら、ロシア内部ではすでに状況は危機的な状況にあるからだ」と述べ、その兆候は昨年、ハリコフとヘルソンが解放された時から現れていると指摘しました。



 つまり、戦場でのウクライナの勝利がきっかけになり、ロシアのプーチン政権の内部崩壊が始まることを楽観視しているが、これは西側の支援なくしては実現しないし、その後のロシアの民主化が絶対条件となるとも述べました。

 さらにロシアに侵攻されたウクライナの国民の意識は大きく変わったと述べました。侵攻前に「東部または南部ではウクライナ人の50~60%がプーチン大統領を支持していたが、今は完全に国民の意識は統一された」と述べ、ウクライナの若者の愛国心は過去のいかなる時代よりも強いことを強調しました。

 果たして西側がウクライナが主張するようなナチスドイツとプーチンのロシアを同一視するのかどうか、第2次世界大戦の時代やその後のイデオロギー闘争の時代と違い、どの国も経済を優先的に考えるリアリズムが存在します。ただ、この紛争を終わらせることは今後の世界を左右する試金石になることだけは確かといえそうです。


 
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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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