優等生といわれた日本の限界 超えられない壁になっている3つの問題


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 約20年前、アメリカやヨーロッパの日本研究者から聞かれたのは「日本は世界的に見て何においても優等生だ」という指摘でした。特に日本をよく知るアメリカ人研究者は「明治維新以降、日本は西洋に学び、戦後はアメリカ当地で自由と民主主義、資本主義を学び、アメリカの想像していた以上の発展を遂げた」と評価した。

 重要なポイントは「想像以上」という点。近代市民社会、産業革命、民主主義の定着を経験してきた欧米は、それに少なくとも200年の歳月を費やした。その間、革命や帝国主義を経験し、世界戦争にも臨んだ。ところが2度目の世界戦争で多くを失った日本の短期間での復興は驚異的でした。

 1980年代後半から欧米は日本の発展の秘訣を必死に研究し、アメリカは最もストレートに日本の製造業から学んだ一方、自国経済を守る国家の規制を撤廃するように日本に迫りました。フランスは分析はユニークで、規制の背景にある強大な権力を持つ官僚機構に注目し、「日本は社会主義国」と分析しました。

 当時、ヨーロッパ全土は社会民主主義が拡散していた時代で、アメリカのような小さな政府を目指さなくても、日本のような管理社会の国が世界第2位の大国に発展しているという意見もありました。

 優等生という指摘は、学んだものをそれ以上に進化させ、競争力を高めたことや、欧米先進国のシステムを導入しながら、まじめに実行し、非常に短期間で成果を出したからに他なりません。つまり、発展に不可欠な学習能力が高かったことを意味します。

 無論、背景に寺子屋から始まった一般市民への教育の底上げ、勤勉のDNA、和の精神、組織への忠誠心、職人文化など長い歴史が育んだ日本の伝統文化があったからこそでした。

 失われた30年といいますが、急成長時代から低成長時代に移行したのは極めてノーマルなパターンで、残念なことは、そこで発展途上国型経済モデルを先進国型モデルに切り替えられなかったことにあると個人的には見ています。

 その最大の原因は、アメリカに追いつけ追い越せという目標から豊かさを求めるヴィジョンを明確にできなかったことでしょう。わかりやすく言えば、世界の人が住みたい国になるヴィジョンを見つけられなかったことです。この30年間、幸福追求のヴィジョンが不明確でゆとり社会は結果的に実現できていません。

 もう一つの原因は、アメリカ人の専門家が指摘するように戦後、アメリカ統治の中で西洋の社会システムが導入され、優等生ぶりを発揮して結果を出してきましたが、アメリカが当時目指した日本のキリスト教化はまったく果たせなかったことです。

 日本独特の多神教文化、東洋の精神というコアバリューの変革は成功しませんでした。日本がどんなに発展しても西洋の精神的価値観を受け入れない日本への不信感は長い間、西洋人の根底に漂っていました。

 ところが西洋のリベラル化が進み、教会に通うキリスト教信徒の数は激減し、LGBTなどキリスト教徒の本来、折り合わない価値観の多様化が進む中、経済的には中国への依存度を高めている欧米は、すでにキリスト教の普遍的価値観を日本に押し付ける元気もなくなっている。

 次のステージに行けない3番目は、役人の権力を弱められていないことです。既得権益の壁は厚く、度重なる行政改革、規制緩和も功を奏していない。そもそも自立心、個の自由の意識が弱い日本人は何かと組織に頼ろうとする。権力を持つ彼らの代わりとなるリーダーも育たない。

 これらは何とかまじめさと勤勉さで整えられる外面的な復興、発展ではなく、意識転換が必要な精神分野に属するもので、簡単には変わらない。最近の日本で驚くのは大きな理想を求めることを望まず、現状維持を好み、超内向きで海外に学ぶ姿勢はゼロになっていることです。

 そのため、次のステージに行くためのヴィジョンの再構築が求められており、それさえ見つけられれば持続可能な発展を阻む壁は壊されると私は密かに考えています。

 


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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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