マクロン仏大統領の強圧外交の成功率 ウクライナ派兵も「排除せず」発言でプーチンを動かせるか

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 フランスのマクロン大統領は、新たな野心を燃やしている。それはウクライナ紛争終結のためにリーダーシップを発揮することだ。先月26日、パリで開催されたウクライナ支援会議後、マクロン氏は参加した20か国首脳・閣僚間での合意はないとしながらも西側からの地上軍派遣について「排除すべきではない」と発言し、物議を醸した。

 支援会議に首脳や閣僚を送り込んだ主要西側諸国である米英独伊は、マクロン発言の翌日には、派兵や駐留はありえないとつよく否定し、マクロン発言に距離を置いた。興味深いのはアメリカではバイデン大統領、ドイツではショルツ首相が、ウクライナに地上軍は送らないという原則を守ると表明し、国のトップの方針であることを強調したことだった。

 思い出すのは2年前のウクライナ侵攻前、バイデン氏は地上軍派兵の有無を聞かれ「ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)ではないので、ありえない」と強く否定したことだった。意味するところは同盟関係のない国は守らないということで、実質的にプーチン大統領にとって侵攻のゴーサインとなった。

 マクロン氏を含め、西側首脳は一貫して、今日までその原則を守ってきた。しかし、フランスの国際関係戦略研究所(IRIS)の分析では、紛争の長期化でウクライナ軍の弱体化が進む中、欧州連合(EU)域内の国もロシアの標的になる可能性は高まっているとの見方があることだ。

 実はウクライナに軍事支援しているEU主要国の砲弾不足は深刻で、自国防衛能力も脅かしている。プーチン氏は帝政ロシア復活を夢見ており、逃げ腰のアメリカを見ながら、ヨーロッパ派遣に食指を伸ばす可能性は捨てきれない。ヨーロッパはヒトラーを経験し、フランスは領土の半分を支配された経験を持つ。

 さらに今年のアメリカの大統領選でトランプ氏が復活すれば、アメリカのNATOからの脱退の可能性もある。アメリカなきNATOは、ウクライナ紛争どころかロシアと闘う戦力は備わっていない。

 マクロン氏の過激発言には、ロシア懐柔策が効果を生まないことを見取ったマクロン氏が、強圧外交に転じ、西側はこれ以上のロシアの強硬姿勢の維持は許さないという何らかのメッセージを発したとも言えそうだ。

 今月4日、マクロン氏は自身の発言について「われわれは議論を開始し、ウクライナを支援するためにできることすべてを考えている」「私は常に私たちの枠組みについて明確にしているし、われわれはロシア国民と戦争状態にあるわけではなく、エスカレーションの論理に入ることを拒否する」と述べ、現時点での地上軍派遣の計画はないことを強調したが、強弁姿勢を変えていない。

 相手はならず者国家で、何十万人もの自国民兵士を犠牲にしてでも、ウクライナへの領土拡大を続けるのがプーチンの変わらない姿勢だ。そのプーチン氏は交渉の席に着かせることはできるのか。

 支持率低迷のマクロン氏の任期はまだ長い。ここでウクライナ紛争終結のためのリーダーシップが取れれば、外交得点を挙げられる。ただ、フランス国民のウクライナへの地上軍派遣に国民の支持があるとも思えない。

 英国のチャーチルが、勢力拡大する独裁者ヒトラーとの軟弱な協定を結ぶより、主権を守るためならどんな犠牲も払うとの考えに国民が支持を表明した状況はフランスにはない。舌戦が効果を挙げられるかは大きな賭けとも言えそうだ。


 
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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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