チュニジア、エジプトの騒乱に慌てる欧州

 チュニジアのベンアリ政権崩壊に端を発し、エジプトでの国民の怒りが納まらない中、実は混乱しているのは、長期独裁支配が続くアフリカ諸国だけでなく、欧米諸国も、かつてないほど困惑状態にあります。

 特にかつてアフリカや中東で植民地を奪いあった欧州諸国は、旧植民地に対する根本的外交政策の見直しを迫られています。たとえば、フランスのアリオマリ外相は、チュニジアの騒乱が激化した1月上旬、23年間独裁を続けたベンアリ政権を支持する発言を行い、国会で非難されました。

 チュニジアの旧宗主国フランスは、結局、国民による反政府行動に対して、手を下すことなく、ベンアリ政権は崩壊しましたが、駐チュニジア大使は、事態を十分に把握していなかったとして更迭されました。しかし、政府として政変にどのように対応するのかは、いまだにはっきりしていない状況です。

 アリオマリ外相は、30日にテレビで、エジプト問題でようやく重い口を開き、「独裁者と民衆とどのような対話が可能なのだろうか」と疑問を呈した上で、
「党派を超えた話し合いこそが、自由と民主主義を呼吸するために、唯一現状を改善する方法だ」と発言しました。

 また、「フランスはエジプトとエジプト人に好意的だ」「エジプト政府のやるべきことは現状に適応した方法を見つけ出すことだ」とも語りました。しかし、フランス政府がチュニジアやエジプトの民衆の意見の把握に務めた過去はなく、独裁者のみと向き合ってきたことは誰もが知っています。

 イスラム化よりは、安定感のある独裁政権を支持してきた欧米諸国は、口では民主主義を唱えながら、実際にはパイプを作り易い独裁政権の維持をサポートしてきたのが実情です。この矛盾は破綻してしまいました。

 15年前のアルジェリアで、民主的な選挙を行ってみれば、イスラム政党が多数派を占め、危うくイスラム国家が誕生するところでした。パレスチナでは選挙でハマスが第一政党になり、欧米諸国は慌てました。

 独裁者たちは欧米からの支援に対して、利権を供与し、支援金は独裁者が独占する構図が出来上がり、チュニジアでは、その腐敗ぶりがネット上で流されました。独裁者の贅沢三昧の背後に、欧米諸国が見え隠れすることで、怒る民衆は反欧米感情も持ち合わせています。

 欧米諸国は、独裁国家への根本的な外交方針の変更を迫られています。未だに旧植民地で利権をむさぼる旧宗主国の態度も、受け入れられなくなるでしょうし、実際、チュニジアやエジプトの若者が高学歴化し、簡単に独裁者にだまされないようになっています。

 まったく先の見えない混乱がしばらくは続きそうです。アラブ世界は強権政治が有効という考えを改めなければならない時期に差しかかっているといえそうです。とにかく、チュニジアもエジプトのアラブ世界では、最も安定感があり、治安がいいと言われてきたわけで、この騒乱を予測した欧米の専門家がいないことも、注目に値することです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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