独ハンブルク・長春間結ぶ貨物鉄道運行開始に思うこと

mcb1710300500002-p1
    長春ー独ハンブルク定期貨物列車(中国新聞社)

 ドイツのハンブルクと中国東北部・吉林省長春市を結ぶ定期貨物鉄道の運行が始まり、今月13日には、長春からヨーロッパに向かう貨物列車が出発しました。長春新区の鉄道ターミナル「長春国際港」とドイツ北部のハンブルクを結ぶ貨物運送ルートが開通したわけです。

 運行を始めたのは中国の鉄道コンテナ輸送会社、中鉄集装箱運輸で、長春国際港を出発して北へ向かい、内モンゴル自治区満洲里から国境を越え、ロシア、ポーランドなどを経て、約2週間で終点、ドイツ・ハンブルクに到着するルートです。

 長春の工業地帯には、中国の自動車メーカー第一汽車を初め、大手企業が生産拠点を置いており、最も古くから中国に投資するドイツ企業との共同プロジェクトも少なくありません。近年は東部沿海地域などの物流拠点からロシア、欧州向けの貨物を列車で運ぶ「中欧班列」の需要が高まっているといいます。

 当面、長春・ハンブルク貨物鉄道ルートは、自動車部品やガラス、テープなどの吉林省の大手各メーカーの製品、アパレル製品などを積んで欧州に輸送するといいますが、欧州と中国を結ぶ鉄道ルートの開通は、原材料と加工製品を相互に運べるようになり、大きな経済効果が期待されています。

 長春国際港は、中国東北部最大の鉄道輸送基地となり、貨物の取り扱い数量は3300万トンで、ハルビンと大連、長春と図門、長春と白城を結ぶ交通の要所となります。吉林省の玄関口として北東アジア諸国と貿易を推進し、中国グローバル戦略の新たな拠点になるとみられています。

 中国と欧州を結ぶ鉄道は、すでに鄭州・ハンブルク間で、2013年7月に初運行され、徐々に本数を増やしています。鄭州鉄道コンテナセンター駅からハンブルク向けに多くのコンテナ貨物が運ばれています。今回のルート運行開始は中国共産党大会開催直前に行われ、政治的意図も感じられます。

 一方、ドイツからすれば、欧州とアジアを結ぶ鉄道輸送ルートの開通は、大きなメリットがあります。かつてシルクロードで栄えたアジアと欧州をルートは違いますが、鉄道で結ぶ夢は20世紀には、日本の満州鉄道に引き継がれ、21世紀には中華思想の野心によって、貨物鉄道が開通したことになります。

 ドイツを含む欧州諸国は、国境を接するロシアに対しては熟知し常に警戒感を持って接していますが、中国に対してはナイーブな考えしかなく、無知とも言えます。経済と政治を切り離して考えている欧州と、極めて政治的動機で経済発展に取り組んでいる中国のスタンスの違いが、今後、両者が接近するほどトラブルの種になることも予想されます。

 ドイツは対中関係でまさに欧州の先頭に立っており、英国も国の安全に関わる原発事業に中国資本の参入を許し、フランスは造船大手企業の売却先で中国にあと一歩で買収されるところでした。

 中国にとって欧州ブランドは世界制覇戦略に欠かせないものであり、欧州・中国間の貨物鉄道ルート開通には懸念材料も潜んでいます。欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れようとする中国は今後、欧州からさらに欲しいものを吸い上げ、踏み台にされるリスクもはらんでいると見るべきでしょう。


関連記事

プロフィール

artworks21

Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

検索フォーム

QRコード

QR