ロムニー元米大統領候補がユタ州の上院議員に立候補、モルモン教の政界基盤とは

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 アメリカ大統領候補だったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事が16日、ユタ州の上院議員に立候補する考えを表明し注目を集めています。ロムニー氏は2012年の大統領選で共和党指名候補として、オバマ氏と互角の戦いをして敗北した経験があります。

 今回、ロムニー氏は、ユタ州選出の現職のオリン・ハッチ議員(83)が引退を表明していることで空席となる上院議席を引き継ぎたい考えで立候補しました。ユタ州と言えば、モルモン教の州として知られ、ロムニー氏自身もモルモン教徒であることを公言している。

 実はロムニー氏は、ミシガン州の出身で大人になった後の大半は、マサチューセッツ州で過ごし、父親と同じ実業家として成功した人物。他のモルモン教徒の青年同様、若い時には2年間の海外宣教を経験している。

 ユタ州出身ではないが、ユタ州に支持者が多く、自身「ユタ州の価値観と教訓をワシントンに持ち込むことができると確信している」と今回の出馬理由を説明しています。実は引退するハッチ上院議員は41年間上院議員を務めた共和党の大物議員で、上院司法委員会委員長などを歴任し、アメリカ政界にモルモン教徒の基盤を築いた人物。

 ハッチ氏がいなければ、モルモン教徒のロムニー氏が、大統領指名候補になる可能性はなかったと言われています。そのハッチは2016年の大統領選で暴れ馬のように登場したトランプ候補を批判し、ロムニー氏もトランプ批判の先頭に立ちました。

 しかし、ハッチ氏はトランプ氏の大統領就任後は、トランプ支持を表明し、議会で信仰的な名演説を行い、多くの人々に感銘を与えました。アメリカ合衆国の儀礼席次5位の共和党の重鎮、ハッチ議員の存在の大きさを示した形です。

 とはいえ、ロムニー氏が当選すれば、共和党上院議員の中でドナルド・トランプ大統領に批判的な向きが増えるのではと、米ウォールストリートジャーナル紙は予想しています。

 ロムニー氏は、2002年のユタ州ソルトレイクシティ冬季五輪の組織委員会を率いた経歴を持ち、予想では上院選で民主党のジェニー・ウィルソン候補を抑えて当選するとの見方が優勢です。

 キリスト教では新興宗教であるモルモン教は、世界で迫害を受けながら、政界、財界、学界などに有能な人材を送り込んだユダヤ教になぞらえられたりもします。しかし、アメリカでは国家に等しい州の一つを抑えたモルモン教は、約180年の歴史で大統領候補を出すまでの政治基盤を確立しています。

 モルモン教の正式名は末日聖徒イエス・キリスト教会で、末日とは聖書の黙示録にある終末を意味し、ハリウッド映画が度々描く人類滅亡の危機に重なるアメリカ人が共感するテーマです。今やモルモン教はアメリカ保守派の一画に位置し、価値観を体現する存在にまでなっています。

 同じキリスト教の背景を持つヨーロッパでは考えられない政教分離とは言い難いアメリカの政治状況です。私は過去、ユタ州からの依頼で長期滞在して取材した経験がありますが、アメリカの保守の精神を代表するような州の一つでした。

 アメリカの政治と宗教の密接な関係は、オバマ、クリントンを代表とするリベラル派では見えないアメリカの顔を見ることができます。




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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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