社会主義国は今後、どうなるのかーベトナムの場合

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 ベトナムは、同じ共産党一党独裁の国ですが、何が違うのかという質問を受けることがあります。まず、前提として自由主義、資本主義の国に住む人々から見れば、社会主義の国は同じように映っていますが、実は共産主義を含む社会主義そのものは数百の異なった考えがあるという事実があります。

 そのため、日本でも共産党と社民党のように左派政党も袂を分かつ政党があるわけですが、今の時代、社会主義体制にある国も、経済発展と共に変貌を遂げ、一言では到底語れない状況です。

 たとえば、同じ共産党一党独裁の中国に比べ、ベトナムはその経緯から、農民を含む人民重視の国という指摘があります。

 これは、19世紀後半から仏領インドシナ連邦に組み込まれていたベトナムで、フランスにまで行って独立交渉したホーチミンの思想が大きく影響していると言えるでしょう。1930年、ホーチミンは香港でベトナム共産党(インドシナ共産党)を旗揚げしています。

 当時、反植民地政策をヨーロッパで支持していたのが、社会主義を標榜する左派だったことと深く関係していたことが、ホーチミンの独立運動の背景にあったからです。第2次世界大戦後、独立戦争の葛藤の中、東南アジアの赤化を嫌ったアメリカの介入でベトナム戦争が勃発し、アメリカの敗北で、今のベトナム社会主義共和国が誕生したわけです。

 ホーチミンは、独立運動に着手した時、ヨーロッパの共産主義運動に習い、貧困と圧政に苦しむ農民や労働者階級を蜂起させたルーツがあり、その人民重視の姿勢が今も受け継がれていると言われています。無論、ソ連、中国も最初はそうだったわけですが、権力の集中と共に変貌してしまいました。

 中国やモンゴルの侵略に1,000年以上前から苦しんできたベトナムは、今でも中国とは距離を置く関係です。中国と似ているのは、共産党一党独裁体制で野党が存在しないこと、土地の私有が認められていないこと、体制批判は2013年の憲法改正で厳罰化は解かれたとはいえ、国家の不安定化に繋がる言動は処罰の対象になるため、あまり変わっていません。

 その一方で宗教を阿片として排除するはずの共産政権下でありながら、仏教徒が8割(大乗仏教、南部に上座部仏教)で、人々には報恩思想、極端な偏りのない中道、輪廻転生、慈悲喜捨などの仏教の精神があることです。その他にもヒンズー教、キリスト教、カオダイ教、イスラム教なども存在し、儒教的長幼の序の考えも存在しています。

 2013年の憲法改正論議では、潰されてしまったとはいえ、国名から社会主義を削除する案も浮上し、国民の社会主義への考えもベトナムでは変貌しつつあるのも事実です。上昇志向が強く、やる気十分な若者層は、強烈な愛国心とともに腐敗する官僚主義への批判を強め、自由を求めています。

 シンガポールに住むホー・チ・ミン出身のベトナム人の友人は、ベトナムは今後、もうひと波瀾ありそうなので帰国を見合わせていると言っています。ベトナム戦争、ベトナム・カンボジア戦争、中越戦争で多くの中華系ベトナム人が世界に散っていきました。友人もその一人です。

 ベトナムはアメリカや中国という大国を退けて独立国家を保ってきた自信があり、今後、社会主義体制をどう変化させていくのかも目が離せません。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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