緊張高まる国際情勢 日本人外交官の交渉力が問われている

 最近、言われなくなったが 、長年「日本の外交は3流」と言われてきた。最近は財務官僚の不祥事に批判が集中していますが、未だに外務省官僚が特権階級、エリート意識を持っているというのは、とても不思議なことと言うしかありません。

  キャリア組の官僚たちがエリート意識を持つのは仕方がない部分もあるし、外務を扱う以上、日本人としてのプライドも必要でしょう。しかし、外務省ではノンキャリア組まで社会的に特権階級意識を持っている。

 対北朝鮮、対中国、さらにはアメリカのトランプ大統領とどう歩調を合わせるかで難しい問題が山積する中、在米大使館のエルサレム正式移転で紛糾するイスラエル問題でも日本が期待されている部分もある。しかし、海外に出て大使館のお世話にならなければ、外交官は一般の日本人とは関係の薄い存在です。

 昔、小泉政権の時に田中真紀子外務大臣(当時)が外務省で噴出した不祥事に「伏魔殿」と比喩したことがあった。その時は、過激な行動を取りすぎて大臣を更迭されましたが、当時問題になった機密費や、外務官僚の腐敗問題を今、気にする人はいません。

 そこで思い出すのは、初代国連大使だった故加瀬俊一氏が私にいった「今の外交官は、高級ツアーコンダクターですよ」という言葉。私自身もヨーロッパ内で日本の外交官に接触する機会は少なくありませんが、彼らが高級接待係の業務に追われている姿は哀れというしかありません。

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 無論、日本で激務に追われるよりは、パリやローマでの接待で飽食三昧の日々を過ごす方がいいのかもしれませんが、非常に難しい外交官試験に受かった人たちがやることかと思うこともあります。元タイ全権大使の故岡崎久彦氏は、「外交官は高級芸者ですよ」といっていたのを思い出します。

 しかし、それよりも問題なのは、典型的日本人政治家である族議員が、その対局にあるはずの国際的な外務省に、未だに影響力を行使していることです。 日本の大局的な外交政策を時の政権とともに策定して、実行するはずの外務省が、およそグローバルな時代とは無縁な日本の村社会に生きる政治家によって、ゆがめられているとすれば深刻です。

 それに元外交官が外交評論家としてメディアで活躍していることにも疑問があります。実際、不戦の誓いのもとに武力紛争と一切関わらないことを決めて、アメリカの顔色を伺いながら70年を過ごしてきた日本の外務官僚の外交経験は非常に未熟というしかありません。軍事行動の選択肢があるかないかで、外交戦略は根本的に違ってくるからです。

 日本の外交官のいうことに耳を傾けてみると、日本国内のロジックをそのまま外国にも当てはめようとしている姿勢が多く見られます。つまり、相手を理解する努力が足らないし、相手を日本人のコンテクストで読もうとしている。その一方で日本人としてのアイデンティティもけっして強いとは言えない。

 つまり、日本村からの発想を脱していないということです。実は、外交官には知能だけでなく、特別な感性が必要です。同時に日本国の尊厳を体現させなければならない存在です。頭さえよければいいという話ではまったくないわけです。

 これまで経済大国として外国に進出する企業をサポートしながら、経済支援などを行うための職務が多かったわけですが、中国などの台頭で外交にもアグレッシブな要素が必要な時代です。それも外交は奇麗事ではまったくない世界なので、知能より人間力が問われる職業です。

 ところが人間形成の最終段階である20歳前後を勉強にだけ費やした人間には、なかなか人間力が身についていない。より多くのことを知る知識偏重ではなく、幅広い人生経験で人間を磨く必要があるわけですが、そういう機会はなかなか与えられない現実がある。

 ハーティスティック・クウォリティ(HQ)というのがありますが、「心の質」という意味です。この心の質の向上に有効なのは、一つには先哲に学ぶこと。もう一つは、20世紀の先進国が排除しがちな宗教を学ぶことだと私は考えています。

 大量に記憶する能力は、トータルな人間の能力を計る上では大した比率ではありません。それよりもいかに現状を正確に把握し、分析し、判断していけるかという能力の方がもっと重要です。実際、海外で実績を出している企業人も同じです。企業は海外でのローカリゼーションに直面しており、外交官的能力も必要になっています。

 記憶や計算能力ではなく、明確に定められた心の方向性の問題です。強固な意志、志、為に生きようという願望があってこそ、初めて記憶力も、分析力も生かされてくる。善悪の価値感、倫理観を持つことも重要です。それを持たなければ、あっと言う間に変な日本人になってしまうからです。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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