Win-Winの交渉セオリーから読み解く米朝首脳会談の行方

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 アメリカのトランプ大統領がいったんはキャンセルした6月12日の米朝首脳会談が実現の方向に向かっています。これまでの流れを踏まえ、30年前にアメリカで登場し、ハーバート流交渉術と呼ばれるWin-Winの交渉術から米朝協議をアメリカ側からの視点で読み解いてみようと思います。

 この交渉理論では最初の基本原則は「交渉相手の立場に注目する」ことです。アメリカ側から見れば、北朝鮮の立場は1、体制保証、2、核兵器保有、3、経済支援(中国のような改革開放への道)、4、朝鮮半島の金正恩氏を中心とした統一でしょう。

 第2の原則は「Win-Winは相手への譲歩を意味しない」です。アメリカ側は、1、体制保証はOK、2、北の核放棄の明確なロードマップは必須、3、2の条件のもとでの経済支援(北朝鮮の国際市場への解放を支援)、4、朝鮮半島の平和と安全の確保を重視なので、2の非核化で双方の利益は相反することが明確で、そこでの譲歩はWin-Winの結果はもたらしません。

 第3の原則は「クリエイティブ・オプションで価値を創出する」です。Win-Winのセオリーの基本は、交渉は落とし所を見つけるのではなく、問題を解決し、新しい価値を創出することです。そのための相互の利益に配慮した創造的選択肢(クリエイティブ・オプション)を考え抜くことで相互利益をもたらすという考え方です。

 アメリカ人の一般的な性格は「問題は必ず解決できる」というポジティブな姿勢にあります。トランプはその意味でも米朝首脳会談に意欲を見せています。米朝会談開催までに、どんなクリエイティブオプションを見出せるかですが、ある次元で互いの譲歩(非核化)が難しい場合、それより高い次元(朝鮮半島統一)に意識を移して、その目的のために事態を動かすこともありえます。

 しかし、交渉の基本は、まず相互が合意できる交渉ミッションを見出すことです。トランプ大統領はの心をとらえ、キャンセルを覆したとされる北朝鮮のキム・ゲグァン外務省第1副相名義の談話に「朝鮮半島と人類の平和と安定のために全てを尽くそうとする我々の目標と意志には変わりがなく、我々は常に小事にこだわらない開かれた心で米国側に時間と機会を与える用意がある」とあります。

 アメリカが好む大義名分を見事に言い当てた談話だったと言えます。つまり、「朝鮮半島と人類の平和と安定のために全てを尽くそうとする我々の目標と意志」が、アメリカが共有できるミッションに当たるということです。無論、北は口先だけかもしれません。

 実際には、韓国、ロシア、中国という周辺国との複雑すぎる環境があるため、米朝協議は困難が予想され、双方の疑心暗鬼は普通のレベルではありません。交渉理論にあるBATNA(交渉がまとまらない時にとりうる最善の代替案)も準備されていることでしょう。

 果たして、米朝協議はミッションである「朝鮮半島と人類の平和と安定」へ向けての協議は実現するのでしょうか。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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