組織を生かすための個人ではなく、個人を生かすための組織に発想を切り換える

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 日本では、個人や組織で問題が発生した時の会見で決まり文句がある。それは「ご迷惑、ご心配をおかけしました。申し訳ございません」という謝罪の言葉です。これは村社会特有の文言で、たとえば芸能人の不倫が発覚した場合、世間が眉をひそめることはあっても誰も迷惑も心配もしていないのに謝るわけです。

 フランスではオランド前大統領が、事実婚のパートナーを大統領夫人としていながら、若い女優のアパートに警護官のオートバイの後ろに座って通いつめていたことが発覚し、マスコミを賑わせましたが、国民へ謝罪することもありませんでした。

 ミッテラン元大統領は、隠し子の存在を指摘され、あっさり認めた上で「それが何か?」と記者たちに質問し返した有名な話があります。アメリカの大統領に同じ問題が起きれば、それなりに資質を問われるでしょうが、国民に謝って切り抜ける姿勢は想像しがたいといえます。

 たとえば、日本ではスポーツ界のパワハラ問題が表面化していますが、世代ごとにパワハラの概念が異なっていたり、旧態依然とした縦社会の弊害に気付かずにいる場合もあります。特に教育的要素が強い世界では「人間は自分が育てられたようにしか人を育てない」ということもあり、その変更や改善は人間が持つ文化そのものの変更を強いられるので大変です。

 企業も不祥事を起こした場合、謝罪会見から始まりますが、多くの場合は内部の自浄作用が働かず、自主廃業した山一證券のように、ごく一部の経営幹部が不正を自覚しながらも隠蔽し続けていたようなこともあり、外圧でしか改善されないことの方が多いの現状でしょう。

 問題は信頼回復のために謝ることより、何を改善して再発を防止するかなのですが、原因究明は、ともすれば関係者の保身の壁に阻まれることも多く、仮に原因が究明されても根本的な改善に着手しないで終わってしまう例も少なくありません。時には誰かがスケープゴートにされ、組織を守ろうという力も働きます。

 そこで最近は第3者委員会を立ち上げることが多いわけですが、それでも関係者の傷を最小限に止めて、その場を切り抜けようという態度は組織に散見されます。日本は実は個人と組織の関係でいえば、組織の力が圧倒的に強く、その組織で指導的地位にある人間の権力は強大で、トップダウンといわれる欧米以上です。

 組織には縦社会を基本に置いた目に見えない、明文化されていない暗黙のルールが多く存在し、そのルールのもとに組織に属する人たちに圧力を与えているのが日本の村社会特有の組織文化です。これが今、グローバル化や伝統的終身雇用、家族文化の急激な変化で、岐路に立たされているのが今の時代といえるでしょう。

 特に組織を支配してきた忠誠心や報恩思想を、今後、どうするのかが大きな課題です。雇用者側が雇ってやっているのだから感謝して、一生懸命働いて結果を出せと要求し、被雇用者が雇って頂いているので会社の恩に報いるため、残業や過重労働も厭わず働くべきという暗黙の了解は、時代の波の耐えられなくなっています。

 そのため、問題発生時の原因究明では、それまで当たり前として触ろうとしなかった精神文化に踏み込んだ深堀が必要で、その上で改善策を考える必要に迫られているといえます。その時に重要なことの一つは組織を生かすための個人ではなく、個人を生かすための組織に発想を切り換えることだと私は考えています。

 そのため古い自分に刻まれた日本的精神のDNAと経験値だけでは、リーダーは務まらない時代が来ているわけです。組織に寄り掛かり、上司のためなら、違法行為すれすれのことでもやってしまうような人間が多い組織には優秀な人材は集らない時代が来ているということです。

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Author:artworks21
安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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