ヤマ場の英EU離脱交渉 北アイルランド問題でメイ政権崩壊の不吉なシナリオが急浮上

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 11日の世界的株価急落は、アメリカの長期金利上昇と米中貿易戦争のエスカレートが主因とされていますが、先行きを見通せない今の現状では、世界経済の行方を左右する地雷がいくつもあることも事実です。その一つがヤマ場を迎えた英国のEU離脱交渉で、世界経済への影響も懸念されています。

 交渉の最大の焦点の一つが、アイルランドと英領北アイルランドの国境問題ですが、ここにきて少数与党のメイ内閣に閣外協力している北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)が、メイ政権を崩壊させる地雷になる可能性が急浮上しています。

 政府は今月末、メイ首相が最終的に打ち出している離脱方針をめぐり、議会提出される予算案を可決させようとしていますが、DUPは反対に回る可能性が10日に判明し、BBCやタイムス紙などの英主要メディアは、離脱交渉最終章で、交渉を主導するメイ政権が崩壊する可能性が出てきたことが指摘しています。
 2017年、野党・労働党の劣勢を見て、EUとの交渉を有利に進めるための政権基盤強化を狙って実施した総選挙は、完全に誤算に終わり、弱小政党のDUPの協力なしに過半数を維持できない状態に陥りました。DUPは協力の条件として、北アイルランドの地位の保障を求めたとされますが、メイ首相の最終離脱方針ではそうはなっていません。

 メイ政権とEUは、英本土と北アイルランド間の物流に関し、税関検査や検疫などを実施する方向で合意案の取りまとめを進めていますが、DUPはこれに強く反発しています。もしメイ政権が、このまま方針を変えなければ、予算案で反対に周り、閣外協力も辞さない構えだというわけです。

 DUPのアーリーン・フォスター党首は10日「我々は英国内での北アイルランドの地位を損なう合意を将来の世代に追わせるようなことはしない」と断言し、メイ政権を揺さぶっています。DUPが閣外協力をやめれば、予算案は廃案となり、メイ内閣は不信任を突きつけられ、離脱交渉の土壇場でメイ氏退場ということもあり得るということです。

 11日には緊急閣僚会合を招集しましたが、メイ政権が打ち出す離脱方針について、閣内も一枚岩ではないため、難航状態です。それにEU側のバルニエ主席交渉官は、アイルランドと北アイルランドの国境に、動物及び食肉加工品の検疫所を設ける必要性では妥協はないとしており、弱体化するメイ経験に対して、EUの原則を貫く構えです。

 バルニエ氏は、離脱で起きる国境問題の英国側の不都合に対して「出て行くことを決めたのは英国だ。われわれの責任ではない」と強い口調で英国を突き放しています。

 11月の離脱合意をめざすメイ政権が退陣に追い込まれれば、来年3月の離脱までの交渉は時間切れとなり、ノーディールの離脱により、大混乱に陥る可能性もあります。すでにフランス国籍を取得する英国人も過去最大数に増加しており、個人も企業もリスクに備えていますが、世界経済への悪影響も懸念されています。

 私自身は個人的にこの悪い流れは、英国エリート層の奢りから来ていると考えています。高学歴の特権階級にあるメイ氏の歴史に名を残そうとする政治的野心と自らの能力を過信する奢りが混乱を招いていると見ています。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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