中国アリババのマー会長は共産党員とのニュースは、どの程度衝撃的なのか

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 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「中国で最も有名な資本主義者は、共産党員だった」と報じ、その驚きと懸念を伝えています。この事実は、中国共産党機関紙・人民日報が26日に、電子商取引大手アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が、中国経済に貢献したとする表彰者一覧の中で共産党員として紹介されていたからです。

 マー氏は、アメリカのヤフーや日本のソフトバンクの孫正義氏などとビジネス関係を持ち、IT産業と金融産業を結びつける典型的な21世紀型資本主義ビジネスモデルで、急成長した中国経済界の巨人です。急速な経済成長と14億に迫る人口を持つ中国市場を背景に、中国の資本主義者を代表する人物と見なされてきました。

 マー氏を取材してきたアメリカのジャーナリストでさえ、彼が共産党員という噂はあっても、本人の口からも、信頼できる情報筋からも出ていなかったとし、特に共産主義を敵視してきたアメリカでは衝撃を持って受け止められているようです。

 WSJは、2015年のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でのインタビューで、マー氏は中国政府への対応に関して「愛せよ、だが結婚するな」と社員にアドバイスしていたことを紹介しています。中国共産党の求心力を高める習近平国家主席と、マー氏の思惑が一致したことが、今回の公表に繋がったと思われますが、アメリカで警戒感が高まることは避けられないでしょう。

 事実、習近平は経済界が力を持ちすぎることは望んでおらず、民間優良中国企業より、国有企業を優遇していると指摘されています。資本主義で目一杯儲けさせてもらっている民間企業のトップが体制批判し中国政府を裏切り、アメリカに亡命した例などは、習近平が最も嫌悪するパターンです。

 その意味でマー氏が党員だと明らかにしたことは、経済界への支配力を強化したい中国政府にとって宣伝になるだけだなく、他の中国民間企業トップたちにもプレッシャーを与えている結果になるでしょう。「あのマー氏が共産党員!」と中国一般市民も受け止めるインパクトがあります。

 しかし、マー氏の中国共産党への取り込みは、改革開放を推進してきた中国政府にとっては、折り込み済みだったとも見ることができます。

 つまり、伝統的な共産主義思想に極端に触れた1970年代の文化大革命で失敗した中国は、経済発展で共産党政権への支持を回復させ、経済の近代化が成功すれば、その土台の上で再び、マー氏のような経済手腕と経験を持つ人物を起用し、社会主義国家建設に邁進するというシナリオがあるからです。

 さらに中国人なら誰でも納得する中国及び漢民族こそ世界の中心という中華思想を再び国民の間に呼び覚まされる時期が来ているともいえます。その意味でマー氏が資本主義者か共産主義者かという色分けは、冷戦時代の遺物的発想で、本当に危険なのは覇権主義をもたらす民族主義に共産主義の凶器が採用されていることだということです。

 日本の外国人材採用議論も、実は中国、北朝鮮、韓国の対日工作員が流入する可能性の方が深刻です。信じてもない資本主義を利用して金儲けをすることや、民主主義国家の言論の自由を利用して、その国の世論誘導をするのは中国共産党の常套手段だからです。

 某大手電機メーカーでの研修で会った中国人従業員の話が忘れられません。「私は日本に来て5年経ちますが、日本人の多くが中国について、完全に間違ったことを信じていることに呆れています」といい、日本に来ても中国共産党に教えられたことが何一つ変化していないことに驚かされました。

 WSJは「共産党員は党の利益を最優先することを義務づけられており、マー氏が共産党の命令とアリババ株主の利益との間で、選択を余儀なくされるようなケースが生じた場合、どうなるのかといった疑問が生じる」と指摘しています。

 アリババ側は「政治的な所属が、会社の決定プロセスに影響を及ぼすことはない」と答える一方、どのくらいの期間、共産党員であり続けるのかという事については答えなかったそうですが、アリババにとっても、中国での立ち位置に新しい状況が訪れているのかもしれません。

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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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