役所の働き方は大きく変わる 前例のないことはやらないからクリエイティブな職場へ

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 役所と言えば、与えられた仕事をそつなくこなし、まるで機械のように働くイメージで、世界中同じと見られ、決して優れた能力や個性を発揮する職場ではないとされてきました。前例のないことはやらないで仕事をつつがなく受け継いでいくことが実績を上げるより重要ということで「頭角を現すとか」とか「太い人脈」とは無縁な職場と思われていました。

 そのため、終身雇用で生き馬の目を抜くような野心むき出しの競争が嫌いで、安定していることが魅力なために、問題意識は持たず、まるで機械かロボットのように働く人間の職場とされてきました。ところが人工知能(AI)とビッグデータの活用、つまりDXが進む中、残された業務は心のこもった血の通った公共サービス、クリエイティブに問題解決するスキルが求められるようになりました。

 無論、公共サービスには高いモラルが必要で、個人情報漏洩の阻止や利権に左右されない公正さを維持することなどを重視することは変わりませんが、プラスでもマイナスでもなければいいという考えで、災害や少子化で人口減に苦しむ自治体の街づくりなどで成果を出すことはできない状況です。つまり、状況を改善する意志が必要な時代です。

 これは公務員にとっては過去にない意識変革が求められているということでしょう。さらに人口減に正面から取り組まなければならない自治体にとって、注目されているのがリーダーシップやマネジメントといった民間企業で重視されてきたスキル養成を官公庁初め、各自治体での導入も始まっています。

 政策を決めるのは選挙で選ばれた代議員による議会で、決定されたことを実施に移すのが代議員による民主主義の基本とされてきたわけですが、人間がやらなくても管理できることが増える中、社会の各層の団体を代表する議員が利権を分け合う政治から、一般市民の個々人の意見が反映される民主主義に変わりつつあります。

 有権者と日々接しているのは、政治家だけでなく、役人たちの方が市民に接する機会も濃厚で、市民の要望をすくい上げやすいポジションにいるのも事実です。それに地方自治に限って言えば、県や政令都市の自治体レベルよりは、小さなコミュニティの存在の方が大きく、きめ細かな行政サービスを提供するには最も地元に近い公務員がやるべきことが増えているのが実情です。

 例えば、世界的に有名なフランスの少子化対策は、国、県、市区町村、教育機関、福祉団体、コミュニティが密接なネットワークを構築し、定期的に問題を洗い出し、改善し、進捗を見守り、評価する仕組みが整っていることが成果をあげる要因になっています。

 それに様々なリソースの活用も必須です。DX時代は問題解決のツールとして、AIを含めたリソースの活用は制度の高い、より効果的な解決策を見出すために必須です。それによりクリエイティブな発想も行政に求められており、外部の様々な知恵を活用するにも、それを見分ける知恵も能力も必要で、右から来たものを左に渡すだけの業務は改善が必要です。

 そのためには1にも2にも「学び」が必要で、楽で安定した仕事を求める人たちの職場ではなくなっています。無論、個人の自由度が増せば、リスク管理を含むガバナンス強化必須ですが、向上心のない、昔ながらの権力に依存した役人根性は消え、住民サービスに心で取り組む、生き生きとした職場に変わることを期待したところです。




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安部雅延(あべ まさのぶ)
フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当した安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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